最新記事
ジェンダー

「女子のくせに。」悔しい気持ちを原動力に...澤穂希と「誰もが個性を発揮できる未来」を考える

2025年2月25日(火)11時30分
※JICAトピックスより転載

個人の努力だけではなく、社会構造の変化が必要

 私はアメリカの女子リーグに移籍して一時期アメリカで暮らしていましたが、そこで、性別だけではなく人種などのマイノリティに対する差別もあるのだと感じました。

亀井 私も数年アメリカで暮らしたことがあります。マイノリティになって初めて分かることがありますよね。

 さまざまな経験を通じて、学びも得ましたし、悔しさを抱えることもありました。ただ、結果を出すことで周りの対応は変化してきました。観客動員数も収入も少なかった時代にW杯で優勝して、それでも男子の方が待遇が良かったけれど、ロンドンオリンピックで銀メダルを取ったことで帰りの飛行機が男子と同じビジネスクラスに格上げされました。その後は男子と同様に遠征にはシェフが同行していますし、女子サッカーのプロリーグも発足しました。結果を出すことで、取り巻く環境が変わってきました。

アメリカ女子サッカーリーグでプレーしていた澤穂希

澤さんは1999年に渡米しアメリカ女子サッカーリーグでプレー。写真は、当時所属していたコロラド・デンバー・ダイアモンズのチームメンバーと

亀井 ロンドンオリンピックの飛行機が、男子はビジネスクラスなのに前年のW杯で優勝した女子がエコノミークラスだったとニュースになりましたね。ただ、認めてもらうための努力は男子よりも必要だったのではないでしょうか。

 そうかもしれません。

亀井 男性も女性も、同じ努力は等しく認められるといいですよね。JICAが協力事業を行っている途上国では、今も女性が非常に厳しい状況に置かれています。女子は男子よりも圧倒的に学校に通う機会が少なく、さらに地震や津波などの自然災害での死亡率も女性のほうが高いケースが多いのです。本来、自然災害リスクは男女に関係なく等しいはずですよね。けれども、女性は家で子どもや高齢者、家畜の世話をしている場合が多く、自分一人だけで逃げることができないのです。また、学校教育を受けられなかったことで緊急放送の内容が理解できず、逃げ遅れるケースもあります。

「社会的に期待される役割(ジェンダー)」で生死が変わってしまう現実があります。あらゆる場面にジェンダーギャップ(ジェンダーで生じる格差)やジェンダーバイアスがありますが、これは一人ひとりが個人で努力して変えていくのは難しい。社会全体を変えていく必要があると感じますし、JICAとしてもそれに取り組みたいと思っています。

サイクロンによる高潮被害

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、2カ

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定「完全な経済協力」、対ロ交渉

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中