最新記事
日本社会

妻が専業主婦でも共働きでも、夫の家事分担は2割でしかない

2025年1月8日(水)12時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
夫婦の家事分担

共働きの世帯でも夫の家事分担の比率は妻から見れば2割に満たない photoAC

<夫と妻が考える家事分担は「名もなき家事」への認識の違いで大きな差が生じている>

正月に帰省した家庭も多いと思うが、義理の親への気遣い等、苦痛を感じたという人もいただろう。親類が集まった酒宴で、男性は座ったままで、女性が準備や片づけにせっせと動く光景は、子どもにすれば「ジェンダー」を内面化させる装置でしかない。

職場と比べて、家庭におけるジェンダー平等はあまり進んでいないように思われる。外部の目が入りにくい「私」の領域という理由もあるだろう。それを端的に示すのは、夫婦の家事分担の統計だ。


夫婦の家事時間が分かる統計は数多いが、諸々の条件を統制した分析ができる調査データとして、東京都が2024年に実施した『とうきょうこどもアンケート』がある。子育て中の母親3600人ほどに、「夫は家事の何割を分担しているか」と尋ねた結果を見ると、最も多いのは「0割~1割以下」で30.9%、その次が「0割」で26.9%。この2つだけで6割にもなる。分布から平均値を出すと13.2%。子育て世帯において、夫は家事の1割ちょっとしか担っていないことになる。

対象の母親を就業状態や就業時間でグループ分けし、夫の分担割合の平均値を出すこともできる。<図1>は、それに基づいて夫婦の分担割合をグラフにしたものだ。

newsweekjp20250108021032-ae8ed762b263bbbf4e2cb5a8cb47cebf832639e8.png

どのグループにおいても、夫の家事分担割合は高くない。妻が主婦の家庭で7.4%、正社員の家庭でも18.9%にとどまる。2割にも達しない。右側は、妻(有業)の就業時間別の結果だが、妻が1日10時間以上働いている家庭でも、夫の分担率は23.4%でしかない。

正社員として夫と対等以上働きつつ、家事の8割を担わされる。右側のグループの母親は、ヘトヘトの日々を送っていることだろう。こういうデータをみると、未婚化・少子化が進むのも頷ける。フルタイム就業を継続するとなると。仕事・家事・家族ケアのトリプルの負荷がのしかかる。それなら結婚は御免。こう考える女性も出てくる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=

ビジネス

インタビュー:高付加価値なら米関税を克服可能、農水

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中