最新記事
米大統領選

トランプ、激戦州死守へ賭けの戦略 「投票意欲低い保守層」ターゲットに戸別訪問を開始

2024年9月14日(土)12時00分

投票意欲の低い保守層を掘り起こしへ

トランプ陣営と支持者は、投票所に行く傾向が低い強固な支持層を動員することが勝利の鍵だと見ている。また、無党派層など説得可能な他の有権者層は激戦州で全有権者の11%を占めると推計し、こうした層にも注力している。

トランプ支持団体「ターニング・ポイント・アクション」の広報担当、アンドリュー・コルベット氏は「数字を詳しく見ると、アリゾナ州だけでも投票頻度が低く、保守的な傾向の有権者が30万人もいることが分かる。もしこうした州で1万票、2万票の差で負けているのなら、事前にこういった有権者に働きかけることには大きな可能性がある」と述べた。

一方、資金が豊富なハリス陣営はトランプ陣営と対照的に、より幅広い有権者層で票を獲得しようとしているようだ。ハリス陣営の関係者は選挙戦略について具体的な説明を避けた。しかし選挙イベントや登録推進活動を通じて、トランプ氏を支持していない女性などの層を取り込む戦略を取っているとみられる。

<支持団体にも変化>

トランプ陣営では少なくとも4つの支援団体が投票頻度の低い有権者への働き掛けに注力していることをロイターは確認した。

米実業家イーロン・マスク氏が支援する特別政治活動委員会(スーパーPAC)「アメリカPAC」、右派活動家チャーリー・カーク氏が率いる非営利団体「ターニング・ポイント・アクション」などの団体は激戦州で戸別訪問担当者を数百人雇うために1億0800万ドル(154億円)を拠出する計画だ。

ただ、トランプ陣営や支持者の全てが投票頻度の低い有権者への注力が良い手法だと考えているわけではない。

選挙戦について説明を受けた激戦州の党関係者は、党への忠誠心が低いスイングボーターよりも投票頻度の低い有権者向けにあまりにも多くの資源が割かれていることに懸念を示した。 

この関係者は、投票頻度の低い有権者を投票に向かわせるには自宅を何度も訪問したり、電話をかけたりしなければならず、多大な時間と資金が必要だと述べた。こうした有権者は政治的な関心が薄く、テレビ広告に目をとめない可能性もある。一方、スイングボーターは投票に向かわせるのが比較的容易だ。

コロンビア大学のドナルド・グリーン教授(政治学)は、投票頻度の低い支持者を動員する取り組みが大統領選には比較的効果があると示す研究結果があり、トランプ氏の戦略には裏付けがあるとしつつ、こうしたアプローチにはリスクがあると指摘。「重要なのは作業が効率的に行われているかどうかだ。何度も同じ場所に行ったり、同じ人に連絡したりするのなら資源の無駄遣いだ」と問題点を挙げた。

トランプ陣営がこのような戦略のモデルとしたのは、1月に行われたアイオワ州党員集会の選挙戦だ。当時、地区ごとのボランティアの運動責任者たちが近隣住民を大規模に動員し、トランプ氏を得票率51%での圧勝に導いた。

前出のペンシルベニア州のゴットバーグ夫妻もこうしたボランティア責任者で、トランプ陣営は同夫妻のようなボランティア5万人の養成を目指しているという。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

訂正(3日付記事)-ユーロ圏インフレリスク、下向き

ワールド

ウクライナ首都に大規模攻撃、米ロ首脳会談の数時間後

ワールド

中国、EU産ブランデーに関税 価格設定で合意した企

ビジネス

TSMC、米投資計画は既存計画に影響与えずと表明 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    1000万人以上が医療保険を失う...トランプの「大きく…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中