最新記事
ロシア

ガス栓を閉めて欧州を凍らせるつもりが自分が凍ったロシアの誤算

Winter Freeze Threats Come Back To Bite Russia As Power Outages Spread

2024年1月10日(水)19時07分
イザベル・ファン・ブリューゲン
凍ったネヴァ川で犬を散歩する人

凍ったネヴァ川で犬を散歩する人(2021年、ロシアのサンクトペテルブルク) Valya Egorshin/NurPhoto

<エネルギー供給を断って凍らせてやると欧州を脅してきたロシア政府だが、ロシア全土に停電が広がり、自国が先に凍り付いている>

この冬、ガスの供給を止めてヨーロッパを「凍らせる」と豪語したロシアのウラジーミル・プーチン大統領だが、皮肉なことに脅しは自分に跳ね返ってきた。ロシア全土に停電が広がり、人々は凍えそうになっているのだ。

【動画】あべこべの停電で凍るロシア

1月4日に、モスクワ中心部から約50キロ南に位置するポドルスク市のクリモフスク特殊弾薬工場で暖房用のパイプが破裂した。その結果、モスクワ地域だけでも数万人の家庭で暖房が使えなくなったと報じられている。

ロシアは年明けから、場所によっては平均気温を15度も下回る異常な寒気に襲われており、モスクワだけでなく、ロストフ、サンクトペテルブルク、ボルゴグラード、ボロネジなど多くの都市が長時間の停電に見舞われている。氷点下の気温と格闘しながら、その過酷さを動画でアピールする住民もいる。

凍えそうだと不満を訴え、ガスストーブやヒーター、そして 「手に入るものは何でも使って」家を暖めていると言う住民もいれば、路上で火を焚く者もいる。

本誌は、ネット上で出回っているこうした動画を独自に検証しておらず、ロシア外務省にメールでコメントを求めている。

「ヨーロッパを凍らせると宣言したロシアが、今は自分で凍っている。公益各社の事故は構造的な問題で、ロシア当局は対処できずにいる」と、ウクライナ内務省顧問のアントン・ゲラシチェンコは8日、X(旧ツイッター)で述べた。

ガス遮断で氷河期に

ゲラシチェンコはXで、ウクライナへの本格的な侵攻が始まった2022年以降、プーチンをはじめとするロシア当局者らが、エネルギー供給を停止してヨーロッパを「凍らせる」と脅してきたことに言及した。

「自分たちの領土的野心が満たされなければ、西側諸国へのガスを遮断するという脅しだ」

ゲラシチェンコは、2022年9月にロシアのエネルギー大手ガスプロムが西側を愚弄する動画を公開したことにも触れた。

「ガスプロムは『そしてこの冬は長くなる』という曲の動画を公開した。ガスプロムの文字が入った制服を着た男がガス栓を閉め、その後ヨーロッパに『氷河期』が来るという内容だ」

「ところが、現実に凍えているのはロシア人だ」とゲラシチェンコは付け加えた。

7日には、ロシア第二の都市サンクトペテルブルクの2つのショッピングモールが、照明と暖房ができず閉店を余儀なくされたと、地元のニュースメディア「78.ru」が報じた。マイナス25度の寒気のなか、市内の多くの家屋で電気、水、暖房が何日も使えない状態が続いている。

 

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

オーストリア中銀総裁、金利見通しに慎重姿勢 利下げ

ワールド

英首相、第2次世界大戦の式典退席を謝罪 選挙戦に痛

ワールド

北朝鮮がごみ風船再開、韓国は拡声器放送で対抗へ

ワールド

仏戦闘機、ウクライナに年内供与 パイロット訓練へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 2

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっかり」でウクライナのドローン突撃を許し大爆発する映像

  • 3

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

  • 4

    ガスマスクを股間にくくり付けた悪役...常軌を逸した…

  • 5

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕…

  • 6

    フランス人記者が見た日本の「離婚後共同親権」が危…

  • 7

    西川美和監督の傑作『すばらしき世界』で反社会的存…

  • 8

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 9

    ロシア軍が「警戒を弱める」タイミングを狙い撃ち...…

  • 10

    昨年は計209匹を捕獲...18歳未満でも参加可、フロリ…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しすぎる...オフィシャル写真初公開

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 6

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 7

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 8

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中