最新記事
インド

中国が中印国境の紛争地帯を自国領土に入れた最新地図を発表、裏切られたモディ首相

India MP Threatens 'Surgical Strike' on China for Annexing Territory on Map

2023年8月30日(水)15時19分
ジェームズ・ビッカートン

国境地帯の緊張緩和で合意したばかりだった中国の習近平国家主席(左から2番目)とインドのモディ首相(同4番目)(8月23日、南アフリカのヨハネスブルクで開催されたBRICS首脳会議) REUTERS/Alet Pretorius

<台湾、南シナ海だけでなく、インドと領有権を争っている中印国境の土地も自国領土とした中国の地図にインドの国会議員は激怒、中国への攻撃を要求した>

中国はインドが領有権を主張する土地を自国の領土に含めた新しい地図を発表。反発したインドの議員が「中国へのピンポイント攻撃」を要求している。

【動画】裸の女性を「パレード」のように引きずり回すインド・マニプール州の暴徒たち

中国の天然資源省が8月28日に発表した新しい「標準地図」は、台湾と一緒にインド東部アルナーチャル・プラデーシュ州と北西部国境地帯のアクサイチン高原を中国の領土としている。また、多くの近隣諸国が領有権を主張している南シナ海の大半を、中国の主権が及ぶ海域としている。

中国とインドは多くの国境周辺地域で主権を争っており、武力衝突も発生している。2020年6月、インド北部ラダック地方のガルワン渓谷で発生した中国軍とインド軍の衝突では、インド人国境警備隊20人と少なくとも中国軍兵士4人が死亡。昨年12月にはアルナーチャル・プラデーシュ州のタワン地域でも両者が衝突し、数人の兵士が負傷した。

問題の地図が発表された後、マハーラーシュトラ州のヒンドゥー教政党シブ・セーナを率いる国会議員サンジャイ・ラウトは、記者会見で行動を要求した。

「ナレンドラ・モディ首相は最近、BRICS首脳会議に出席し、中国の習近平国家主席に挨拶したばかりだ」と彼は語った。「その後、中国はこの地図を発表した。中国はアルナーチャルを侵略しようとしている。もし政府に勇気があるなら、中国にピンポイント攻撃を行うべきだ」

多発する中国の挑発

8月初めには、最大野党インド国民会議を率いるラフル・ガンジーが、中国が実効支配するアクサイチン高原と隣接するインドのラダック地方に中国軍が侵入し、インドの領土を「乗っ取った」と主張。インドの国土は中国に「1インチも占領されていない」というモディの主張とは真っ向から対立する発言をした。

ガンジーは最大野党インド国民会議を率いており、モディ首相が属する与党インド人民党(BJP)に対抗している。8月初め、ガンジーは

モディ首相は24日、南アフリカで開催されたBRICS首脳会議の中で、習近平と直接会談を行い、両者は印中国境の係争地域をめぐる緊張の緩和に向けた「取り組みの強化」に合意した。

中国外務省は翌日発表した声明で、モディと習近平が「現在の中国とインドの関係について率直かつ深い意見交換を行った」と述べた。「両国は二国間関係の全体的な利益を念頭に置き、国境地域の平和と安定を共同で守るため、国境問題を適切に処理すべきである」。

中国の新しい地図には、台湾と、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を争っている南シナ海の大部分に対する中国の領有権主張も含まれている。中国軍は領有権を強化するため、南シナ海の島々(自然島と人工島を含む)に基地を建設している。

今年6月、カナダの出版社グローバル・ニュースは、中国軍艦が台湾海峡で米海軍の駆逐艦と衝突しそうになる様子を映した動画を公開。アメリカ側は中国艦船が「安全でない操縦を行った」と主張した。

その前月も中国海軍のJ16戦闘機が南シナ海上空を飛ぶ米空軍の偵察機に異常接近するという事件が起き、アメリカは中国軍機が「不必要に攻撃的な操縦」を行ったと非難している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイスアジア運営のファンド、取締役の個別面談義務化

ワールド

TikTok禁止法、クリエイターが差し止め求め提訴

ビジネス

中国、売れ残り住宅の買い入れ検討=ブルームバーグ

ワールド

豪が高度人材誘致狙い新ビザ導入へ、投資家移民プログ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中