最新記事
アメリカ経済

米政府の資金が尽きる債務上限「Xデー」迫る 金融機関は市場の混乱に備え

2023年5月27日(土)09時56分
ロイター
ニューヨーク証券取引所

米連邦政府の資金が尽きるとされる6月1日の「Xデー」が近づくにつれ、金融機関の間で不安が高まっている。ニューヨーク証券取引所前で2022年11月撮影(2023年 ロイター/Brendan McDermid)

米連邦政府の資金が尽きるとされる6月1日の「Xデー」が近づくにつれ、金融機関の間で不安が高まっている。一部のトレーダーが6月に満期を迎える米国債を避ける一方で、債務不履行(デフォルト)リスクのある債券を扱う準備を進める動きも見られる。

米国債は市場全体で担保として広く使われており、債務上限引き上げ交渉がXデーまでにまとまらず、財務省が国債の償還や利払いができなくなった場合に、そうした債券がどのように扱われるかが市場の焦点となっている。

銀行やマネー・マーケット・ファンド(MMF)が債券を担保に短期資金をやりとりするレポ市場で、一部の銀行などが6月に満期を迎える財務省短期証券(Tビル)を敬遠していると運用会社の幹部が明らかにした。6月に満期を迎えるTビルは14本ある。

カーバチュア・セキュリティーズのレポ担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント、スコット・スキアーム氏は1年以内に満期を迎えるTビルを一部の参加者が受け取らないと指摘。5月初めから市場にストレスが見られ始めたという。

ジャナス・ヘンダーソンのグローバル債券ポートフォリオマネジャー、ジェーソン・イングランド氏は「(資金の出し手は)Xデー前後の担保を扱いたがらないだろう」と語った。

レポ市場を活用するある独立系ブローカーディーラーの幹部は、今のところまだTビルを担保として受け入れていると話す。その一方でデフォルトを防ぐために米連邦準備理事会(FRB)と財務省が取る措置を想定してシステムを変更しているという。

ニューヨーク連銀のオペ(公開市場操作)参加銀行のうち、少なくとも大手3行は全てのTビルを受け入れていると関係筋が明かした。

満期を迎える証券の支払いを遅らせるために財務省が返済期日を先延ばしする案を専門家のグループが2021年12月にまとめている。そうすれば対象の証券を取引し、「FEDワイヤー証券サービス」を通じて決済できる。

しかし専門家グループはそのためにブローカーディーラーの多くが取引システムを調整する必要があり、証券の支払いが遅れた場合の影響はやはり深刻なものになると警告している。

前出のブローカーディーラーの幹部も煩雑なプロセスになると指摘し、満期の延長に対応するためには「基本的に自社のシステムを壊す必要がある」と指摘。しかしデフォルトはもっと悪い結果を招くとし「満期を延長しなければ何が起こるかわからない」と語った。

(Gertrude Chavez-Dreyfuss, Saeed Azhar and Davide Barbuscia記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中