最新記事
ベラルーシ

ロシアの戦術核配備でベラルーシ政権転覆の恐れ──ロシア高官

Russian Official Warns of Plot to Overthrow Belarusian Government

2023年3月30日(木)18時28分
ニック・モドワネック

ルカシェンコ政権下でベラルーシは「ロシアの完全な衛星国」となったと、Shraibmanは指摘する。「それによりルカシェンコの身は安泰になった。いざという時はロシアが守ってくれるからだ」

ガルージン発言と相前後して、プーチンはベラルーシに戦術核を配備する方針を発表した。ベラルーシ軍が保有する旧ソ連の戦闘攻撃機Su24を、核弾頭を搭載できるよう改造し、ベラルーシ人パイロットの訓練も行うという。

ルカシェンコはロシアの高まる圧力に「全く無力」で、ただ言いなりになったのだろうと、元米陸軍大将のベン・ホッジスは言う。

ベラルーシへの戦術核配備は「ロシア政府による情報作戦」だと、ホッジスはみる。「自分たちは核兵器を持っているんだぞと、世界に思い知らせたいのだ。核をちらつかせるたびに、西側の多くの関係者が過剰にビビることをロシアは知っている。西側がウクライナ支援をためらい、及び腰にさせようという作戦だ」

ベラルーシは「核保有国」と吹聴

一方、ルカシェンコは乗り気だ。だが彼が気にかけているのは自身の政治的な利益だけだとShraibmanは言う。

「そのことは以前からベラルーシの将来を危うくしていたが、今はその傾向があまりにも明白になった」

ベラルーシの国営テレビの司会者で、ルカシェンコ政権のプロパガンダに力を入れているRyhor Azaronakは番組で、ベラルーシは今や「核保有国だ」と誇らしげに語り、隣国のポーランドやリトアニアに核攻撃を加えることもできるとまで言ってのけた。

ベラルーシの反体制派のリーダーで、今はリトアニアに逃れているスベトラーナ・チハノフスカヤは、ロシアの戦術核配備はベラルーシの民意に「甚だしく逆らう」動きだと非難した。

チハノフスカヤの政治顧問のフラナク・ビアチョルカはルカシェンコ政権が戦術核配備の受け入れを表明した3月28日に本誌の取材に応じ、「ベラルーシ国内の不服従と不満が高まり、反体制武装組織の活動も活発になるだろう」と語った。「以前にも、(ウクライナ侵攻のための)ロシア軍の装備が鉄道で大量にベラルーシに輸送されたときに、大規模な反体制運動が起きた。ベラルーシ領内にロシア軍の装備や兵士が大量に送り込まれ、ロシア軍の動きが活発化すれば、それに比例して反体制の動きも活発になる」

まして核の配備となると、国民の激しい反発を招くと、ビアチョルカはみる。

ロシアはベラルーシへの戦術核配備の発表に先立ち、米ロの新START(戦略兵器削減条約)の履行を停止し、核戦力に関する情報提供もやめると発表した。アメリカも同様の措置を取った。

<関連記事>
「欧州最後の独裁者」ベラルーシ大統領の豪邸告発動画で国民の怒りが爆発
ベラルーシ版ワグネル「ガルドセルビス」とは?──ひしひし伝わるプーチンからの強い「圧」

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

シスコシステムズ、26年度収益予想を上方修正 AI

ワールド

インド政府、首都の爆発は「テロ事件」 カシミールで

ワールド

イスラエル軍がガザで「人間の盾」使用との情報、米前

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、足元はプラス圏 TOPI
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中