最新記事
部活動

中学生の課外活動は部活から地域クラブへ

2023年3月22日(水)13時45分
舞田敏彦(教育社会学者)
日本の部活動

中学生の運動部加入率は近年低下傾向にある gyro/iStock.

<課外活動の場が学校から地域社会へ移れば、教員の働き方改革につながる>

少子化にもかかわらず、教員不足が深刻化している。教員採用試験の競争率も低下の一途で、小学校で見るとピークの2000年度では12.5倍にもなっていたが、2022年度では2.5倍。県によっては2倍を割り、フリーパスに近くなっている。

これではいけない、何とか志望者を増やそうと、各地の自治体は試験に工夫を凝らしている。年齢制限の緩和(撤廃)はもちろん、試験の実施時期を早める、大学3年時に1次の筆記試験を受けられるようにするなどだ。果ては、教員免許状がなくてもOKという自治体も出てきた(山口県)。合格者には2年後の採用を確約し、その間に免許状を取得してもらう、という寸法だ。

だが志望者が集まらない最大の理由は、教員の過重労働であるのは言うまでもない。この病根にメスを入れることはあまり考えられていないようで、新規採用教員向けの冊子に「忙しいはありがたいこと」などと書く自治体もあり、働き方改革をする気が本当にあるのかと疑いたくなる。

OECDの国際教員調査「TALIS 2018」によると、日本の教員(中学校)の勤務時間は対象国の中で最も長い。業務別に見ると、授業・授業準備時間(①)は国際平均と同じくらいだ。何で差が出ているかというと、課外活動指導や事務作業(②)で、この2つは諸外国とくらべて明らかに長い。横軸に①、縦軸の②の週平均時間をとった座標上に、調査対象の47カ国を配置すると<図1>のようになる。

data230322-chart01.png

日本は縦軸上の位置がぶっ飛んでいる。日本の中学校教員の総勤務時間は56時間だが(週平均)、そのうち授業・授業準備は27時間。仕事の半分以上はそれ以外の業務で、その中で大きいのは上図で取り上げた課外活動指導や事務作業だ。

どこを直すべきかは、分かり切っている。日本の教員は授業以外の多種多様な業務も負わされ、あたかも「何でも屋」のように扱われている。変えなければならないのは、こういう状況だ。

特に問題と指摘されるのは課外活動指導(部活指導)だ。日本の中学校教員の週平均時間は8時間だが、10時間、15時間を超えている教員も少なくない。20時間超の者もいる。諸外国では考えられないことだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

物価目標の実現は「目前に」、FRBの動向を注視=高

ビジネス

財新・中国サービス部門PMI、6月は50.6 9カ

ビジネス

伊銀モンテ・パスキ、メディオバンカにTOB 14日

ビジネス

カナダ製造業PMI、6月は5年ぶり低水準 米関税で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中