最新記事

ウイルス

乗客をまとめて検便します...米CDCが飛行機トイレ汚物の解析を検討中

2023年2月3日(金)19時30分
青葉やまと

旅客機から汚水を迅速に回収し、ラボに送って分析する...... undefined undefined-iStock

<乗客を個別に検査することなく、変異株の発生と伝播傾向を検知可能に。CDCとホワイトハウス、航空各社のあいだで議論が進んでいる>

旅客機に乗った乗客を、一機まるごと検便する──。米疾病予防管理センター(CDC)が、こんな大胆な施策を検討している。

新型コロナウイルスによるパンデミックでは、ウイルスが続々と変異を続けている。変異株は既存の免疫が効きにくいとされており、流行が長引く原因のひとつとなっている。

そこでアメリカでは、CDCがホワイトハウスや民間の航空各社などを巻き込み、トイレの汚水を分析して変異株の流入状況を把握する方式を提案している。

分析には数日を要し、個人も特定できないため、この検査の結果如何で入国を断られることはない模様だ。プログラムの目的は、新たな亜系統の発生を検知し、さらに地域間での伝播の様子を把握することにある。

とくに長距離となる国際線では、多くの搭乗客がトイレを利用する。乗客の時間を奪うことなく、海外から流入するウイルスを把握できる画期的な方法として注目されている。

旅客機から汚水を迅速に回収

検討中のプログラムは、民間の旅客機から汚水を採取し、ラボに送って分析する方式となっている。

米バイオ企業のギンコー・バイオワークス社のマット・マクナイト統括部長は、米CNNに対し、「飛行機から2分未満で汚水を採取し、我々が管理しているラボのネットワークに迅速に送ります」と説明している。

ラボでは科学者たちがウイルスのゲノム配列をスキャンし、未知のウイルスを示す兆候がないかを確認する。通常はゲノム配列の解読に5〜7日を要するが、ギンコー社は2〜3日程度まで短縮できるとしている。解析結果はCDCに送付される。

マクナイト氏らは飛行機の汚水分析がウイルスを捉える「レーダーシステム」として機能すると説明している。CDCは解析結果を評価し、ワクチン接種スケジュールの決定などに活用できる可能性があるという。

鼻粘膜のサンプリングより有効との評価も

現在アメリカの空港では、鼻粘膜からのサンプリング調査が行われている。トイレの汚水検査は、これよりも優れた手法となる可能性がありそうだ。

米政治メディアのポリティコは、「飛行機のトイレがCDCの亜種狩りに新たな希望をもたらす」と報じている。

記事によるとアメリカでは現在、任意の協力者を対象に、アンケート調査と鼻孔粘膜によるサンプル採取を実施している。1日あたり、約30ヶ国から到着するおよそ500の便が対象だ。

例えば1月2日からの週には、全米の7つの空港において4500人から協力を得られたという。協力者は急速に増えており、前週のほぼ2倍の人数となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政府、ブラウン大学の安全対策再検討へ 銃乱射事件

ビジネス

元の対ドル基準値、1年3カ月ぶり高水準に 元高警戒

ワールド

米ヘリテージ財団から職員流出、反ユダヤ主義巡る論争

ワールド

トランプ氏、マドゥロ氏に退陣促す 押収石油は「売却
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中