最新記事

ロシア軍

ロシア動員兵の間で事故死や変死相次ぐ

Russian Draftee Killed After Grenade Launcher Misfires

2022年12月8日(木)12時07分
ブレンダン・コール

プーチンの動員令で集まった予備役を待つ苛酷な運命(9月28日、ボルシスキー) REUTERS

<同僚の自動擲弾銃の暴発で命を落とした動員兵から原因不明の死まで、ロシア軍司令部は次の動員の成果に関わるとして隠蔽しようとしている?>

動員されたばかりのロシア軍兵士が訓練中に死亡する事故が起きた。仲間が撃ったグレネードランチャー(自動擲弾銃)の弾に当たったという。

この事故は12月5日、レニングラード州のルーガ近郊にある砲撃演習場でに起きたと、報道機関「アスタロージュナ・ノーボスチ」はテレグラムチャンネルで伝えている。当時兵士たちは2つに分かれ、一方は対戦車火器の砲撃演習を、もう片方はグレネードランチャーの試射を行っていた。

1人の兵士が「グレネードランチャーの制御を失い、あらゆる方向に撃ち始め」、一発の擲弾が37歳の兵士に命中。「頭部の負傷によりその場で死亡した」と、アスタロージュナ・ノーボスチは伝える。死亡した兵士は、ロシア北西部のボログダ州ボロク村から動員されたばかりだった。ロシア軍の検察と警察が事故の捜査にあたっている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9月21日、ウクライナでの戦争に向けて予備役30万人の動員令を発令した。軍事ブロガーや国営テレビはかねてから、この動員に伴う不満の声を報じてきた。新兵向けの装備や訓練は不十分で、報酬も満足に支払われていない。ロシア軍部隊の士気は下がる一方だというのだ。

予備役の招集が発表された後の数週間には、まだウクライナに到着もしないうちから、動員兵が原因不明、あるいは不可解な状況で死亡するケースが複数発生している。

訓練センターで3人死亡

ロシアのニュースサイト「イッツ・マイ・シティー」のテレグラムチャンネルによると、ロシア中部のスベルドロフスク州では、ある動員兵が酒を飲んだあとに自らの吐瀉物で窒息死した。同サイトによると、同様の事例は9月末から4件起きている。

10月には、シベリア地方にあるノボシビルスク高等軍事学校の敷地内で、兵士が遺体で発見された。ニュースサイト「Sibkray.ru」は近親者の話として、この兵士は「暴力的な行為の結果として」亡くなったと伝えている。

人権派の弁護士パベル・チコフは10月、動員令が出て以降の数週間で、少なくとも6人の新兵が亡くなったと述べた。うち3人は、スベルドロフスク州にある陸軍の訓練センターで亡くなったという。

ウクライナの情報機関であるウクライナ保安庁(SBU)は12月3日、ロシア軍の通信を傍受した結果として、ロシア軍司令部が召集兵の死因を隠していることが判明したと発表した。「新たな動員が始まる前に軍内部での暴動が発生するのを防ぐため」だという。

一方、アメリカの戦争研究所(ISW)は12月4日の戦況レポートで、ウクライナでの戦闘に動員されたロシア軍兵士の中で、命令に従わない者の数が増えており、司令官の命令に逆らったとして、最近になって数百人が身柄を拘束されたと伝えている。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IBM、コンフルエントを110億ドルで買収 AI需

ワールド

EU9カ国、「欧州製品の優先採用」に慎重姿勢 加盟

ビジネス

米ネクステラ、グーグルやメタと提携強化 電力需要増

ワールド

英仏独首脳、ゼレンスキー氏と会談 「重要局面」での
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中