最新記事

中国

中国共産党大会、アナリストも見過ごす注目点「政治活動報告」

DIVINING THE PARTY CONGRESS

2022年10月20日(木)17時30分
シャノン・ティエジー(ディプロマット誌編集長)
中国共産党

前回党大会の政治活動報告では台湾問題などが語られたが(2017年) XINHUA/AFLO

<ゼロコロナ、中国経済、「戦略の窓」......。習近平政権の政策の行方に関する指標となる5つのポイントとは?>

(本誌2022年10月25日号〔10月18日発売〕「2032年の習近平」特集より)

中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)が10月16日、北京で開幕する。5年に1度開催される党大会で注目されるのは、最後に明らかになる指導部の新体制だ。最高意思決定機関である政治局常務委員会のメンバーが選出され、序列順に登場するため、党内の権力構図を占う材料になっている。

ただし、注目点はほかにも数多い。その1つが「政治活動報告」だ。

党トップである総書記(現職は習近平〔シー・チンピン〕国家主席)が読み上げる政治活動報告は、前回党大会以降の5年間の成果を振り返ると同時に、今後5年間の優先項目や政策の土台になる。だが、その重要性はアナリストに見過ごされがちだ。

第20回党大会の政治活動報告で特に注意すべきポイントを、5つの問いで読み解くと──。

【1】ゼロコロナ政策はまだ続く?

党はいつまでゼロコロナ政策にこだわるのか。これこそ、中国国民の最大の関心事の1つだ。党大会が滞りなく閉幕(して大会前のピリピリムードが解消)したら、規制が解除されるのではないかと、多くの国民は期待している。とはいえ、そのとおりになる保証はない。

今回の政治活動報告には、ゼロコロナ政策の行方を示す大きな手掛かりが含まれる。政府の従来の取り組みや、他国と比べて少ない感染者・死者数が自賛と共に語られるのは当然のこと。だが新型コロナに「容赦なく」臨む戦いは継続中か、それとも勝利に終わったのか。

【参考記事】中国、入国者の隔離期間短縮を検討=ブルームバーグ

【2】中国経済へのアプローチは?

ゼロコロナ政策が今も経済の足を引っ張るなかで、中国は不動産部門の苦境や破綻寸前の金融機関など、折り重なる複数の経済危機に陥っている。中国の成長モデルは持続不可能だと、エコノミストはかなり前から警告してきた。今や、ツケを払う時が来たようだ。

2017年の前回党大会の政治活動報告で、習は「発展の質や効率の絶え間ない向上」や「経済構造の着実な改善」を強調。その一方で「不均衡で不十分な発展や拡大し続ける生活向上への欲求」が、中国の新たな「最大の矛盾」だとも認めた。

政治活動報告で中国経済の成功をアピールするのは定石だ。その筆頭が、結党100周年を迎えた昨年、目標としていた小康社会(やや豊かな社会)の実現を宣言したことだろう。この5年間の経済的成果として何を強調するかは、中国経済に対する党の見方を示す重要な指標だ。

政治活動報告は今後5年間の優先課題を把握する上でも役立つ。2017年の党大会で、習は「工業化、IT応用、都市化、農業の現代化」を掲げた。

これらに代わる新たな優先事項は何か。「共同富裕(みんなで豊かになろう)」という格差是正のスローガンは復活するのか。それとも、中国経済が逆風にさらされる現時点では破壊力が強すぎるとして、ひそかに葬られるのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

街角景気、4月DIは1年8カ月ぶり低水準 円安によ

ワールド

エクソンCEOの取締役会議長再任、カルパースが反対

ビジネス

豊田織、日銀の清水季子理事が社外取締役に内定

ビジネス

英GDP、第1四半期は予想上回る前期比0.6%増 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 4

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 7

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中