最新記事

感染症

サル痘「感染者」女性はわずか1%...「誰もが感染」可能性にどれだけ警戒すべき?

2022年8月2日(火)18時00分
リズ・ハイリーマン(医療ジャーナリスト)
子供のサル痘感染者

現時点で感染者の大半は同性・両性愛者の男性だ(写真は感染した4歳女児) BSIPーUIG/GETTY IMAGES

<世界的に感染が広がるサル痘について、子供や女性を含む全ての人に感染リスクがあるのは確かだが、新型コロナのように怖がるのは正しい行動なのか>

幼い子供を持つシカゴ在住のリサ(30)には、心配なことがある。メディアの報道やソーシャルメディアの情報を見る限り、サル痘の脅威を感じずにいられないのだ。

この天然痘に似た感染症は、ウイルスの付着した衣服を介して感染する場合があり、もしかすると空気感染する可能性もあるという。「(サル痘は)子供たちや社会全体に広がり、保育園や学校で感染拡大するだろう」と、ある有名な医師はツイッターで断言した。

スーパーマーケットで買い物をするのは危険なのか。新型コロナを警戒して過ごした2020年のような生活に逆戻りしなくてはならないのか。リサは不安でいっぱいだ。

誰もが感染する可能性を持っているという公衆衛生当局やメディアのメッセージは間違いではないが、誤解を招く。

米疾病対策センター(CDC)は、潜在的な感染ルートとして患者の発疹への接触、対面での飛沫への曝露、性交渉、抱擁、ウイルスが付着した物体への接触を挙げている。しかし、リスクの度合いは一様ではない。

密接な身体的接触によりサル痘に感染する可能性は全ての人にあるが、これまで判明している感染者の「大多数」は同性愛者もしくはバイセクシュアルの男性だと、CDCのロシェル・ワレンスキー所長は述べている。

16カ国の500人を超すサル痘感染者を調べた最近の調査によると、感染者の98%は、男性と性交渉を行っている男性だ。そして、95%の症例では、性的接触が感染ルートである可能性が高いという。

現時点で女性や子供の感染者はごくわずか

現時点で、このグループ以外の感染者は比較的少数にとどまっている。公衆衛生専門家によると、世界で確認されている感染者に占める女性の割合は1%程度にすぎない。子供の感染者も、少なくとも今のところはごくわずかだ。

新型コロナの経験により思い知らされたように、新しい感染症について予測することには慎重であるべきだが、多くの専門家は、男性同性愛者の性的ネットワークの外でサル痘の感染が爆発的に拡大するとは予測していない。

欧州疾病予防管理センターによれば、複数の性的パートナーを持つ人たちの間でさらに感染が拡大する可能性は高いが、社会全体に流行する可能性は「極めて低い」という。

今回の流行は、サル痘ウイルスの感染力が強まった結果とは考えにくいが、男性同性愛者の性的ネットワークが感染拡大しやすい環境をつくり出したと言えそうだ。今の流行では、性交渉が大きな要因になっているようにみえる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

UBS、クレディS買収後の技術統合に遅延あればリス

ワールド

EU、対ウクライナ長期安保確約へ 兵器供与など9項

ビジネス

中国、大きく反発も 米が計画の関税措置に=イエレン

ビジネス

FRB、物価圧力緩和まで金利据え置きを=ジェファー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子高齢化、死ぬまで働く中国農村の高齢者たち

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 7

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    あの伝説も、その語源も...事実疑わしき知識を得意げ…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中