最新記事

スリランカ

スリランカ、ガソリンほぼ尽きる 給油所に人の波...3日並んだ運転手も

2022年7月1日(金)18時00分
青葉やまと

ガソリンはこの先3週間購入不可か

6月29日に入るとロイターは、スリランカにおける燃料の国内在庫が約1週間分にまで低下したと報じた。次回の入荷は未定だという。

現地メディアの「ニュース・ファースト」によると、サガラ・ラトナヤク首相補佐官は同日、国内の石油公社からガソリンを出荷できるのは早くとも3週間以上先の7月22日になるとの見通しを示した。ディーゼルはやや早く、7月15日までに出荷できるというが、それでも2週間以上購入できないという事態だ。

政府は学校と一部国営機関を閉鎖し、燃料消費の削減を図っている。一部公務員には週1日の休暇が追加で与えられ、インフレ対策を兼ねる目的で、この時間を利用して自宅で食料を育てることが推奨されている。

6月のインフレ率50%超 募る国民の不満

経済危機のスリランカで、国民は厳しい生活を迫られてきた。対外債務が増加するなか、返済と輸入品の購入に充てるための外貨準備が不足していることで、必要な物資の輸入に支障をきたしている。国内市場は、食料や医薬品などの生活必需品が入手困難な状態だ。

ブルームバーグによると6月のインフレ率は、54.6%という驚異的な水準に達した。英ガーディアン紙は、国民の5人に4人が食事の量を減らして耐えていると報じている。

燃料事情も、ここ数ヶ月ほど危機的な状態が続いてきた。そこへ、支払いの遅滞により石油貨物の到着が遅れたことで、今回の致命的な事態に至った。

北部ビスバマドゥの給油所では6月17日、燃料の在庫切れに腹を立てた顧客をきっかけに、数十人規模の暴動に発展した。鎮圧のため軍が派遣され、ガソリンスタンドという場にもかかわらず実弾を発砲する展開となっている。アルジャジーラが報じた。

長引く生活苦に、国民の不満はピークに達している。国会議員の私邸に火が放たれるなど激しい抗議デモが相次ぐなか、マヒンダ・ラジャパクサ前首相は5月に辞任した。だが、以降も経済は好転しておらず、生活苦の出口はみえない。

>>■■【動画】スリランカ、無数のバイクがガソリンスタンドを埋め尽くす■■

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

プーチン氏、5月に訪中 習氏と会談か 5期目大統領

ワールド

仏大統領、欧州防衛の強化求める 「滅亡のリスク」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中