最新記事

中国経済

2030年代に世界一の経済大国になるも、「豊かな経済大国」にはなれない中国

CAN CHINA OVERTAKE THE U.S. ECONOMICALLY?

2022年7月22日(金)07時43分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)

220726p18_CKH_02.jpg

市場経済導入を率いた鄧小平は97年に死去。全土で人々が花をささげ最後の別れを告げた REUTERS

だがGDPは、その国の国力や暮らしの豊かさを測るのに必ずしも最適な物差しとは言えない。30年代初頭に中国は経済規模でアメリカと肩を並べるかもしれないが、1人当たりの国民所得では水をあけられたままだろう。

ちなみに20年のデータでは、中国の1人当たり国民所得はわずか1万400ドルで、アメリカ(6万3000ドル)の約6分の1だ。

30年の中国の人口は14億6000万人超と予想されている。中国が31年まで年平均5%の経済成長を達成し、31年にGDPでアメリカと並んだと仮定しても、1人当たり国民所得は1万9700ドルにしかならない。

対照的に、アメリカの人口は30年には3億5500万人程度になるとみられ、31年の1人当たり国民所得は8万2000ドルを少し超えたくらいになるだろう。中国の約4.2倍だ。

さらに重要なことに、中国がアメリカに経済規模で追い付いたところで、30年代になっても技術力の差は相当に大きいままだろう。

そのため、世界最大の経済大国という称号は手に入ったとしても、中国は世界最強どころか世界で最も豊かな経済大国にもなれない。その称号はアメリカのものであり続ける。

中国の指導部、特に習近平(シー・チンピン)国家主席は、今後10年間も年平均5%の成長を達成できるはずだなどと気楽に構えるべきではない。この先、成長の足を引っ張る数多くのマイナス要因が待っているからだ。

経済成長は株式投資と同じで、過去の実績から未来を予言することはできない。中国経済が過去に急成長を遂げたからといって、今後も同じ勢いで前進し続けられると思ったら大間違いだ。

可能な限り無難な予測をするとすれば、今後の中国経済は過去と比べてかなりパッとしなくなるだろう。90年代初頭以降の奇跡的な経済成長をもたらしたプラス要因がほぼ全て消えてしまったからだ。

何よりも、安い労働力が際限なく供給された時代はもう過去のものだ。90年に中国人の年齢の中央値はたった24.9歳で、人口の4分の3近くは農村部に住んでいた。

90年から10年にかけて都市部に移り住んだ2億~3億人の農村住民は、労働集約型工業を支える労働力となった。加えて、大量の人口が農村から都市に流入したことで、生産性が爆発的に上昇した。

これは農村部で彼らが携わっていた第1次産業より、都市部でははるかに生産性の高い仕事に就くことが多かったからだろう。また、農村部からの大量の人口流入は世界最大規模で最速の都市化を引き起こし、数十年間にわたる大型のインフラ開発や不動産のブームが起きた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国外相、キューバ外相と会談 国家主権と安全保障を

ビジネス

マレーシア、今年の成長予測上げも AIブームが後押

ビジネス

英建設業PMI、1月は46.4に上昇 昨年5月以来

ワールド

ドイツ企業、政府の経済政策に低評価=IFO調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 4
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 9
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 10
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中