zzzzz

最新記事

中国

習近平はウクライナ攻撃に賛同していない――岸田内閣の誤認識

2022年2月20日(日)11時17分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そのウクライナをロシアが侵攻するかもしれないという状況の中で、中国が侵攻賛成に回るはずがないだろう。

岸田内閣の中に「侵攻反対」表明を「中国とは逆のメッセージ」を表明したと位置付ける「同席者」がいるとすれば、中国とウクライナの関係を何も知らない「国際政治の素人」が日本政治の中心にいるということになろう。

2月4日に習近平とプーチンが対面で会談したあと、長い共同声明と多くの協定を発表し、少なくとも「NATOの東方への拡大には反対する」と表明したのは、中露両国のギリギリの妥協点である。プーチンにとっては、それを言ってくれさえすれば、最低条件は満たされたということになろう。

各国首脳がプーチンと会談したがるのは「手柄」を自分のものにしたいから

そもそもプーチンが「ウクライナ侵攻はしない」と最初から何度も言っているのに、アメリカが「いや、ロシアは必ずウクライナ侵攻をする」と繰り返し主張し、現にバイデン大統領などは「16日の朝3時に必ず侵攻する」と予言者めいたことを言ったので、世界は「2月16日の朝3時」をヒヤヒヤしながら待った。

しかしその日、その時間、ウクライナでは何もこらず、至って平穏な日常が流れたので、バイデンはやはり「オオカミ少年」であると嘲笑された。

するとバイデンは18日になると、今度は「いや、数日内に必ず侵攻する」と第二の時限付き予言を発して頑張っている。

数日以内に起きないと、「いや、長期的に見ないとならない」として、結局今年秋のアメリカ大統領中間選挙まで引き延ばし、選挙を有利に持って行くつもりだろう。

各国首脳がプーチンと会談したがるのは「自分がプーチンと話し合ったからこそ、プーチンはウクライナ攻撃を思いとどまったのだ」と自画自賛したいからとしか思えない。

2月14日のコラム<モスクワ便り―ウクライナに関するプーチンの本音>に書いたように、プーチンはフランスとドイツしか相手にしておらず、特にマクロン首相には最大の信頼を置き、マクロンにプーチンの思いを伝えて、西側諸国を説得してもらおうと思っているようだ。

バイデンには、「ロシアがウクライナ侵攻をしてくれないと困る」諸般の事情があるようで、これに関しては別途考察したい。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

20240604issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月4日号(5月28日発売)は「イラン大統領墜落死の衝撃」特集。強硬派ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える グレン・カール(元CIA工作員)

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ウィーワーク、再建計画を裁判所が承認 破産法脱却

ビジネス

米インフレは2%目標へ、利下げ検討は時期尚早=ダラ

ワールド

金正恩氏、超大型多連装ロケット砲発射訓練を指導=朝

ビジネス

日鉄のUSスチール買収、米国以外の規制当局がすべて
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカで増加中...導入企業が語った「効果と副作用」

  • 2

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 3

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程でクラスター弾搭載可能なATACMS

  • 4

    地球の水不足が深刻化...今世紀末までに世界人口の66…

  • 5

    F-16はまだか?スウェーデン製グリペン戦闘機の引き…

  • 6

    国立大学「学費3倍」値上げ議論の根本的な間違い...…

  • 7

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 8

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 9

    AI自体を製品にするな=サム・アルトマン氏からスタ…

  • 10

    EVと太陽電池に「過剰生産能力」はあるのか?

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 8

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中