最新記事

追悼

【再録:石原慎太郎インタビュー】アメリカ人の神経を逆なでした男~石原慎太郎はなぜ『「NO」と言える日本』を書いたのか

Strong Words from Japan

2022年2月1日(火)18時25分
ジェフ・コープランド、ドリアン・ベンコイル

「人種偏見」と指摘され憤まんやるかたない米国人

石原発言のなかでアメリカ人が最もいらだちを覚えるのは、「日米間の問題には......人種偏見がある」という主張だ。その証拠にアメリカは日本に原爆を落としたではないか、と石原は言う。

人種偏見は、アメリカで深刻な社会悪とみなされている。外国人を受け入れないことで知られる日本人からこんな非難を浴びせられたアメリカ人は、憤まんやる方ないのだ。

「私が日本で受けた差別に比べれば、日本人が受けている差別などとるに足りないだろう」と、投資家のT・ブーン・ピケンズは語る。彼は小糸製作所の株を買い占め、役員を派遣する権利を得ようとしている。

人種差別だとの非難は、アメリカの対日批判をことさら軽視するための方便だとみる向きもある。「深刻な貿易摩擦が起きているのに、人種偏見の一言で片づけるのはまちがっている」と、レビーンは言う。

ヴォーゲル教授も、この見方を支持している。「人種偏見を問題にすれば、自分たちは被害者で外国人は侵略者だと考えることができる。日本人は、こうした被害者意識に陥る傾向が強い」

容赦ないアメリカ批判にもかかわらず、『NO」と言える日本」にもアメリカ人のファンはいる。「日本人は単なる技術の模徹者ではないし、私たちはそのことを認める必要がある......この本は人々の目を覚まさせるかもしれない」と、コンピュータ業界誌の発行人ナンシー・マグーンは語る。

実際、アメリカ人は石原が言うような狭量な国民とは程違い。あらゆる意見に公平に耳を傾けることが、アメリカ人の美徳なのだ。

なかには、この本はアメリカ人の助言に従っただけだとみる人もいる。マニュファクチャラース・ハノーバー・トラスト銀行のロバート・シャープ副頭取は言う。「われわれは、日本人にこう言ってきた。控えめすぎるのはよくない。何かよからぬことをたくらんでいるのではないかと疑惑を招くだけだ、と」

とはいえ『「NO」と言える日本」のようなギラギラした本が日本からあと数冊出れば、アメリカ人は日本人が遠慮がちだった昔を懐かしむようになるかもしれない。(次ページに石原氏インタビュー)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部ザポリージャで14人負傷、ロシアの攻

ビジネス

アマゾン、第1四半期はクラウド部門売上高さえず 株

ビジネス

アップル、関税で4─6月に9億ドルコスト増 影響抑

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中