最新記事

中国

北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す

2021年12月9日(木)16時35分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そこへさらに林芳正氏を外相に充てたということは、もう親中まっしぐらで行くことを示唆している。

私は林氏と何度かテレビ対談をしているが、林氏は人格的には威張ってなく、フランクな感じで好感が持てる。ところが対談を始めてみると、驚くほどの親中ぶりを発揮し、私はナマ放送で思わず「あり得ない!」と言ってしまったという経験がある(2018年10月)。

それもそのはず、林氏はそのとき日中友好議員連盟(日中議連)の会長だった。

2019年5月5日には日中議連の代表として訪中し、北京でチャイナ・セブンの一人である汪洋(全国政治協商会議主席)と会見している。

汪洋はこの時、日中議連の長年にわたる中国への貢献を讃え、特に「去年は習近平主席と安倍首相が何度も会い、一帯一路プラットフォームを通して協力と友好を深めている」と礼賛した。

さすがにこのまま外相を務めるのはまずいと思ったのだろう、今年11月11日に外相就任と同時に林氏は日中議連の会長職は辞任したものの、際立った親中派であることに変わりはないだろう。 

今年11月18日には中国の王毅外相と電話会談しているが、林氏の方から「来年は日中国交正常化50周年記念なので、日中友好を一層深めたい」と申し出、日本の報道によれば「王毅外相も賛同した」とある。林氏の方が日中友好に積極的なのだ。

また中国側報道では、王毅が林氏に訪中を要請したとは書いてないが、林氏自らが、11月21日に「王毅外相から要請があった」と明らかにしてしまった

中国はクワッドを骨抜きにする狙い

中国は東京五輪を支援し参加してきたのだから、日本が北京冬季五輪をボイコットするなどということはできないと思っている。

事実11月25日の外交部定例記者会見で趙立堅報道官は以下のように述べている。

──中国と日本は、互いの五輪開催を支援するという重要なコンセンサスがある。 中国は、東京五輪の開催にあたり、既に日本側を全面的に支持してきた。日本側には基本的な信義があるべきだ。(引用ここまで)

「重要なコンセンサス」が出来上がっていたということは即ち、日本は「こっそり」=「水面下で」、「すでに中国と固く約束を交わしていた」ものと解釈することができる。それを気性の荒い趙立堅がばらしてしまったことになろうか。

したがって岸田首相や林外相がどんなに言葉を濁しても、日本が外交的ボイコットをする可能性はないと言っていいだろう。閣僚のレベルを下げるくらいのことはしても、「政府高官」を誰一人派遣しないということはないということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中