最新記事

ワクチン接種

針が怖くて献血を嫌がる日本の学生にワクチン接種は広がるか

2021年6月26日(土)15時15分
にしゃんた(羽衣国際大学教授、タレント)

ひと昔前なら「甘えるな、がんばれ!」と背中を押せたかもしれないが、今の時代はそんなことも許さない。下手したらハラスメントで訴えられかねない。「世の中で輸血者が命を繋ぎ止めるために血液が必要としていて、針が怖いとか怖くないとかの稚心と同列に並べて語るなかれ」や「人生で自らもそうだが、愛するものが輸血にお世話になることなく人生を全うすることはありえないのではないか。自分が協力出来るうちに協力するのは筋ではないか」などありったけの語彙力を駆使して相手を諭そうとしたところで悲しいながら結果が変わったことははっきり言って一度もないのだ。そういうこともあって、個人的には今回のワクチン接種はどう進むのか興味がある。

今回政府の立場などから説明されている接種が求められる理由は2つだ。1つは自らの命を守るため、そして周辺の愛する者も含め、周りの人々の命を守るためだ。この2つの理由は繋がって見える者もいるだろう。つまり自分も助かり、周りも助けるという一石二鳥の境地だ。しかしこの二つがしっくり繋がらず、どちらかの理由で、つまり自己のためか、他者のためのいずれかの理由で接種に至る者もいるだろう。そして上記のいずれの理由にも突き動かされず接種しないという者も確実に出てくるだろう。

日本に限ったことではないが、ここにきてベーター変異株の流行もあり世界中で若者のワクチン接種を促している。現時点ではまだ主にワクチンが行きわたっている欧米などの先進国の話ではあるが、若者のワクチン摂取は進まず困っているようだ。むろん進まない理由は日本のように「針が怖い」とは流石に海外からは聴こえてこない。

ワクチン接種の「ご褒美」は有効?

だからと言って対策としてフィリピンのドゥテルテ大統領のように「ワクチンを打たなければ刑務所に入れる」と脅すわけにもいかず、世界的にも、日本もそうだが官民学などあらゆるレベルでのご褒美合戦となっている。政策や対策は結局のところ「飴」と「鞭」しかないのだと改めて実感する。

実は献血の際もご褒美は用意している。だがそれを見て心変わりする若者は個人の経験上いない。今回のワクチンを促す際のご褒美は有効だろうか。ただ今回のワクチンは、ご褒美つまり飴だけではない。この流れだとワクチンを打っていないと行動が制限され、学生ならもしかしたら就職活動にも支障が出る可能性もある。つまり「鞭」とセットになっている。

私などは文系出であるためなおさらだが、教員の立場では学生に対してワクチンを打ってとも打たないでとも言えない。学生各々の自己判断に委ねることになる。繰り返しになるがこの状況で若者が自らどのような判断を下すのか観察対象として楽しみだ。そして今回ワクチンを打つか打たないかを若者が自ら判断する瞬間に遂げる大きな成長に期待したい。これは本当の意味での成人の儀礼なのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

エヌビディアが独禁法違反、中国当局が指摘 調査継続

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中