最新記事

中国

対韓制裁、ほくそ笑む習近平

2019年7月7日(日)20時13分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

冷え込む日韓関係(写真は2015年、都内で開かれた日韓国交正常化50周年の催しより) Toru Hanai-REUTERS

日本は1日、スマホや半導体製造に必要な材料に関して対韓輸出規制を強化すると発表した。4日にはそれが実行される中、喜んでいるのは中国だ。狙いだった日米韓離間だけでなくファーウェイの一人勝ちにも貢献する。

韓国政府は懲罰を受けて然るべき

日本政府は7月1日、スマホのディスプレイや半導体製造過程に必要な材料の、韓国向け輸出規制を強化すると発表し、4日からは実行に移されている。

対称となるのは、テレビやスマホのディスプレイに使う「フッ化ポリイミド」や半導体ウェハーに回路パターンを転写するときに薄い膜として塗布する「レジスト」と、半導体製造過程においてエッチングガスとして使われる「フッ化水素」などの3品目だ。

経済産業省によれば、これらを「包括的輸出許可」の対象から外して個別的な輸出許可の対象に切り替えるとのこと。つまり、韓国に上記品目を輸出するためには、1件ずつ審査と許可を得る必要が生ずる。ほぼ輸出禁止に等しい。

菅官房長官は2日の記者会見で、輸出規制に踏み切った理由について、あくまでも「安全保障を目的とした適切な輸出管理の一環だ」と説明し、元徴用工問題とは関係がないと言っているが、元徴用工問題に関する韓国政府の対応への報復措置であることは、誰の目にも明らかだろう。

韓国政府、特に文在寅大統領は、懲罰を受けるに足る原因をいくつも作っているのだから、むしろ明確に「懲罰だ」と言ってしまった方が、韓国には「親切」なのではないかとさえ思う。

なぜなら、慰安婦合意にしても日韓政府間で合意に達したものを、韓国はいつも「ああでもない、こうでもない」と理由を付けては蒸し返すという対日対応をエンドレスに繰り返してきたのだから、日本政府は遠慮をせずに明確に言って聞かせた方がいい。

というのも韓国という国は、右派・左派(保守派・革新派)が親日・反日あるいは反中・親中ときれいに分かれて政党あるいは政府ときちっと結びついているわけではなく、左右が入り乱れて民間団体を作ったり特定政党を支持したりしなかったりしているので、大統領は民意の動きに右往左往しながら選挙を目指してあたふたする傾向にあるからだ。

その意味では、失礼ながら韓国は、政府与党が政権能力を持っていない国という特徴があると言っても過言ではないだろう。

1990年代から2000年代初期にかけて、何度も主宰してきた若者たちの意識調査あるいは民意調査を通して、それを実感している。

韓国では衝撃が

規制対象となった「フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素」の世界における日本のシェアは、70%~90%を占めており、独擅場に近い。韓国の毎日経済新聞などによると、韓国の半導体メーカーは70%以上を日本からの輸入に頼っているとのこと。おまけに日本の供給は安定しているので材料の貯蓄がほとんどないようだ。そうでなくともガス類の長期保存は困難である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中