最新記事

米朝関係

北朝鮮のミサイル発射直後、アメリカはICBMを発射していた

U.S. and North Korea Launch Missiles at Same Time

2019年5月10日(金)18時00分
トム・オコナー

北朝鮮が軍事演習で発射したミサイル(10日提供、撮影日時は不明) KCNA-REUTERS

<今週、米朝がほとんど同時にミサイル発射実験を実施――その真意はどこにあるのか>

アメリカと北朝鮮は5月9日、ほぼ同時にミサイルの発射実験を行った。北朝鮮の非核化を目指した米朝間の交渉が行き詰まり、両国間の緊張が再び高まりかねないタイミングだが、背景には何があるのか――。

韓国軍によると、北朝鮮は現地時間で午後4時半過ぎに、中西部の亀城(クソン)付近から東方向の日本海に向けて、短距離ミサイルと見られる飛翔体を発射した。この飛翔体は約420キロ飛行して日本海に落下した。さらに約20分後にも同様の飛翔体を発射し、この2発目も東方向に約270キロ飛行して日本海に落下した。

北朝鮮は4日にも、東部・元山(ウォンサン)付近から短距離弾道ミサイルと見られる数発の飛翔体を発射し、米韓の専門家から「国連安保理決議に違反する」と指摘されていた。米朝間の非核化交渉が行き詰まりを見せる中で、北朝鮮が弾道ミサイル実験を実施したとすれば2017年以来、約1年4カ月ぶりのこととなる。

一方ほとんど報じられていないが、9日の北朝鮮の1発目の発射実験から11分後には、アメリカも大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行った。カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から、約6700キロ離れた南太平洋・マーシャル諸島のクェゼリン環礁に向けて発射された。

「今回のミサイル発射実験で米朝両国は、外交努力で積み重ねてきた脆い成果を吹き飛ばすリスクを冒している」と、核廃絶を目指す民間団体「ニュークリア・エイジ・ピース・ファンデイション」のリック・ウェイマンは本誌取材に語った。

米原潜のミサイル実験も同時に

両国の発射実験がほぼ同時刻だったにもかかわらず、またアメリカと北朝鮮は先週も数日の間を開けてミサイル発射実験を行っているが、米空軍の地球規模攻撃軍団(AFGSC)の広報は9日、米軍の「ICBM発射実験は、世界的なできごとや地域情勢の緊張に反発、反応したものではない」とコメントした。

米国防総省は、ICBM発射実験はかなり以前から予定され、今年2月には米露が偶然、約1時間半の間に相次いでICBM発射実験を実施したこともある、と話している。

今月の2回の実験で米軍が発射したのは、核戦略のトライアド(三本柱=ICBM・潜水艦発射ミサイル・空中発射巡航ミサイル)のうちICBMとして運用されている唯一のミサイル「LGM-30G ミニットマンIII」。核弾頭の搭載も可能だ。

さらに9日のICBM発射実験の数時間後には、米海軍のオハイオ級原子力潜水艦ロードアイランドが、フロリダ州の沖合で核弾頭の搭載が可能なミサイルの発射実験を行った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中