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Apple不振で解雇された台湾・鴻海従業員をHuaweiが雇用

2019年2月25日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

主たる内容は以下の通りだ。

――アメリカは安全上の危険があるとして世界の至る所で華為(Huawei)を封殺せよと呼び掛けているが、しかし未だに「安全上の危険がある」と主張するその証拠を出すことが出来ずにいる。もし台積電(TSMC)が華為を封殺するようなことがあれば、それは台積電が自らの手で自らの道を封殺したことに等しい。台湾は自らの死路を求めるべきではない。

来年には台湾の総統選がある。次期総統選で国民党候補が当選し国民党政権となった場合、もしTSMCがいまHuaweiの半導体に関する受託業務を放棄したとすれば、TSMCは大陸においても台湾においても存続することは困難になる。ましてや今、鴻海がHuaweiと手を組んだとなれば、TSMCはなおさらのこと大陸から撤退するなどという道は選べないはずだ。

そうでなくとも、台湾の企業経営者は政治では動かない。自分の会社が儲かるか否かだけが関心事だ。そのためなら北京政府を向く。

台湾の経済界は北京政府の顔色を気にしている

台湾の経済界は、ビジネスチャンスを与えてくれる北京政府の方しか向いてない。特に台湾の国民党は大陸志向で、鴻海もTSMCも馬英九の国民党政権の時に大きく成長した。

北京政府の顔色を窺っているのは経済界だけでなく、教育界も同じだ。

実は筆者が1946年から1948年にかけた国共内戦(国民党と共産党の内戦)において長春が食糧封鎖され数十万の無辜の民(中国人)が餓死に追いやられた記録『チャーズ 出口なき大地』(1984年、読売新聞出版局。今は絶版)を中国語に翻訳して大陸で出版しようとしたが、30年待っても、どうしても許可が出なかった。そこで香港や台湾の出版社に声を掛けたのだが、いずれも「北京政府に目を付けられると商売ができなくなるから」と断ってきた。

そうこうしている内に70を過ぎて、中国が民主化して言論の自由が認められる前に自分の命の方が先に尽きると観念して、2012年に朝日新聞出版から出版した『チャーズ 中国建国の残火』(2冊を1冊にまとめたもの)を改めて翻訳し、懇意にしていた台湾の某大学の学長に頼んだところ、台湾の出版社の社長を紹介してくれた。

こうして、ようやく中国語版が世に出たのだが、そのとき驚いたのは学長が「どうか、私の名前を出さないでくれ。大陸との交流に差し障りが出るので」と言ってきたことである。教育界でさえ、中国大陸側の顔色を窺いながらでないと運営ができない。大陸から留学生を受け入れたり、産学連携などをしているからだ。

ましてや純粋なビジネス界においては、台湾独立を主張する民進党の蔡英文総統が何を言おうと、従ったりはしないだろう。来年の総統選では大陸での商売を順調に進めさせてくれる国民党を当選させようと、経済界は手ぐすね引いて待っている。

恐るべき連鎖反応

風吹けば桶屋が儲かるではないが、AppleのiPhone業績が悪化したためにHuaweiが台湾の鴻海を助けることになり、鴻海がHuaweiと提携するなら、なおさらのことTSMCはHuaweiから離れないという連鎖反応が生まれつつある。

Huaweiの任正非総裁は、この連鎖反応を計算したのかもしれない。だから「絶対にアメリカに押し潰されたりはしない!」(BBC)と語気が荒いのだろう。

結果、台湾経済界はHuaweiから離れないことになる。

AppleのiPhone不振は、とんでもない結果を招いてしまったものだ。


endo2025.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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