最新記事

中国

Huaweiの頭脳ハイシリコンはクァルコムの愛弟子?

2018年12月10日(月)08時45分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ハイシリコン総裁の卒業大学に共同研究所を設立していたクァルコム(QUALCOMM) Yves Herman-REUTERS

なぜ華為の頭脳ハイシリコンの半導体が最先端を行っているかというと、世界トップの米国半導体大手クァルコムの直接の教えがあったからだ。クァルコムが如何に中国に根ざしていたかを見ないと真相は見えて来ない。

クァルコムは中国改革開放と歩みを共にした

アルゼンチンでトランプ大統領と習近平国家主席が首脳会談を行なった翌日の2018年12月2日、中国政府の通信社である新華網はロサンゼルス発の情報として「クァルコムは中国の改革開放と歩みを共にしてきた」というタイトルの論評を発表した(新華社電であることは文末)。サイト内にある「高通」はクァルコム(Qualcomm)の中国語呼称である。1985年にアメリカのカリフォルニア州で創設したクァルコムは、キッシンジャー・アソシエイツを通して中国に進出していたが、1989年6月4日に起きた天安門事件でアメリカを中心とした西側諸国が中国に対する経済封鎖を始めると、暫時、中国におけるビジネス展開を中止していた。

しかし1992年の日本の天皇陛下訪中により西側諸国の経済封鎖が解除されると、再び中国におけるビジネスを展開し始めている。

2000年に当時の朱鎔基首相がWTO加盟のために清華大学の経済管理学院にアメリカ大財閥を中心とした顧問委員会を設置すると、ほどなくクァルコムのCEOは顧問委員会のメンバーに入った。

中国郵電大学にクァルコムとの共同研究所設立

1998年になると、クァルコムは中国郵電大学に共同研究所を設立し、人々をアッと驚かせた。

何を隠そう、この北京郵電大学こそが華為(Huawei、ホァーウェイ)の頭脳であるハイシリコン(HiSilicon)社の総裁を輩出した大学なのである。

ハイシリコンの何庭波総裁は女性で、まだ40代の若さだ。自分を研究者とも呼ばせない、生粋のエンジニアである。ビジネスに煩わされたくないので、華為の研究部門から独立し研究開発に専念した。彼女の志と風貌に関しては、まもなく出版される『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』で詳述した。

クァルコムの北京郵電大学への力の入れようは尋常ではなく、北京郵電大学内に「クァルコム杯(高通杯)」というものまで設立したりなどして、人材養成のために巨額の研究投資(時には1億ドル)を行なっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ペロシ元下院議長の夫襲撃、被告に禁錮30年

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅安、FRBは利下げ時期巡り慎

ワールド

バイデン氏のガザ危機対応、民主党有権者の約半数が「

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中