最新記事

アニマル・ウェルフェア

殺処分されているオスのヒヨコ60億羽が助かる!?──孵化前の性別判断可能に

2018年12月27日(木)15時00分
松岡由希子

孵化前のひよこの性別を約98%の精度で判断 RyanJLane -iStock

<独ライプツィヒ大学の研究者が、孵化前のひよこの性別を約98%の精度で判断する独自の手法「セレクト」を考案した>

養鶏において、鶏卵を産むことができないオスのひよこは、肉用鶏として飼育されるものを除き、その多くが殺処分されている。米国の食品・農業研究財団(FFAR)によると、その規模は世界全体で年間60億羽にのぼり、アニマル・ウェルフェア(動物福祉)の観点から課題となっている。

孵化前のひよこの性別を約98%の精度で判断する

独ライプツィヒ大学のアルムース・アインスパニア教授は、孵化前のひよこの性別を約98%の精度で判断する独自の手法「セレクト」を考案した。「セレクト」では、まず、産卵から9日目の卵を孵卵器から取り出し、センサーで受精しているかどうかをチェックしたうえで、レーザーを使って卵の殻に0.3ミリ未満の小さな穴を開け、受精卵から少量の尿酸膜を抽出する。

さらに、この尿酸膜に性別を特定するホルモンであるエストロン硫酸が含まれているかどうかを専用マーカーで検査する流れだ。エストロン硫酸が検出されれば、メスと判断されて21日後の孵化まで孵卵器で育てられる一方、受精していない卵やオスと判断された卵は高タンパク質飼料として加工される。なお、一連のプロセスは安全なもので、受精卵が傷つくことはない。

Grafik_SELEGGT.jpg

「セレクト」は、現在、ドイツ連邦食糧・農業省(BMEL)による約500万ユーロ(約6億3100万円)の助成のもと、ライプツィヒ大学と独大手スーパーマーケットチェーン「レーベグループ」が2017年3月に設立した合弁企業を通じて実用化がすすめられている。これまでに受精卵から尿酸膜を抽出するプロセスを自動化するマシンが開発された。

ベルリンのスーパーマーケットで販売開始

2018年11月には、レーベグループ傘下の総合スーパーマーケット「レーベ」とディスカウントストア「ペニー」が独ベルリン市内で展開する223店舗を対象とし、「セレクト」を通じて孵化させた鶏から採取した鶏卵の販売を開始した。2019年には、この販売対象エリアをレーベとペニーがドイツ国内で運営する全5500店舗に拡大する計画だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、大型減税法案可決をアピール アイオワ州

ワールド

IMF、スリランカ向け金融支援の4回目審査を承認

ビジネス

ドイツ銀、グローバル投資銀行部門で助言担当幹部の役

ビジネス

ドイツ自動車対米輸出、4・5両月とも減少 トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中