最新記事

戦争の物語

歴史問題はなぜ解決しないか(コロンビア大学特別講義・前編)

2018年3月13日(火)17時05分
ニューズウィーク日本版編集部

magSR180313main1-2.jpg

トム(アメリカ人)「真珠湾攻撃で思い浮かべるのはアメリカが参戦したきっかけだということ。小学校4年生のときに教科書で習ったと正確に記憶している」 Photograph by Q. Sakamaki for Newsweek Japan

【ジャジャ】 観光地化している記念館。

【グラック教授】 (パールハーバーのUSSアリゾナ記念館に)行ったことがありますか?

【ジャジャ】 はい。

【グラック教授】 この中で、行ったことがある方はどれくらいいますか?(4人が手を挙げる)ここまでが最初の質問でした。2つ目の質問は、「その印象は、どこから来たのか」です。どこから、「日本による攻撃」という印象を得たのですか。(再び、同じ順番で学生たちが回答していく)


【ユウコ】 歴史の教科書です。

【グラック教授】 何年生のときですか。

【ユウコ】 小学校5年生くらいのときでしょうか。

【ニック】 高校生のときに基礎的なことを学び、大学生のときに日本史を専攻して歴史書から深く学びました。あとは、米軍に入隊していたので、そこで第二次世界大戦について勉強しました。特に、諜報活動の失態について。

【グラック教授】 それで、諜報活動を連想したのですね。学校の歴史の教科書にはあまり書かれないことです。いつ米軍にいたのですか。

【ニック】 07年から15 年までです。

【グラック教授】 次は、「ベン・アフレック」。これはどこから来たのか分かります。映画ですよね。

【トニー】 そうです、映画から連想しました。でも最初に真珠湾攻撃について知ったのは、9年生のときの「アメリカ政府」という授業です。

【グラック教授】 9年生のときに「アメリカ政府」の授業? それはどこで学んだのですか。

【トニー】 フロリダ州のタンパです。

【グラック教授】 「アメリカ政府」の授業で、パールハーバーにどう言及されたのですか。

【トニー】 正確には覚えていません。9年生の頃のことなので......。

【グラック教授】 分かりました。よく覚えていない、ということ自体も重要ですね。では、次。「アメリカが第二次世界大戦に参戦したきっかけ」というのはどこから?

【トム】 小学校の教科書です。小学4年生のときだと、正確に記憶しています。

【グラック教授】 本当に? どこで育ったのですか。

【トム】 (カリフォルニア州)サンフランシスコの近くです。

【グラック教授】 なるほど。知らない人もいるかもしれませんが、アメリカでは教科書や学校のカリキュラムというのは州ごとに決められていて、それぞれ異なっています。カリフォルニア州のカリキュラムは、他の州とは大きく違います。これはアメリカ独特の現象ですね。ほとんどの国には、国が定めた教科書というのがありますから。では次、「多くの犠牲者」と答えたミシェル?

【ミシェル】 私の母からです。祖父は米海軍でホノルルに配置されていました。

【グラック教授】 おじいさんは犠牲になったのですか?

【ミシェル】 いえ、祖父は犠牲にはなりませんでした。

【グラック教授】 そうですか。私はちょうど今日、アイルランド出身の同僚からこんな話を聞きました。彼女はパールハーバーに思い入れがあると。彼女の父親がアイルランドの陸軍に所属していて、パールハーバーがあったために故郷に戻ることになり、そこで彼女の母親に出会ったから、だそうです。アイルランドは中立国だったのですが、彼女の話はあなたと同じように、家族のストーリーですね。家族として接点があるのですね。では、次に「ベン・アフレック」と答えたスティーブン?

映画のほかに、どこかで聞いていませんでしたか?

【スティーブン】 実は、その映画で初めてパールハーバーの話を知りました。高校生のときで、数人でその映画をレンタルして見ました。

【グラック教授】 どこでですか?

【スティーブン】 バンクーバーです。

【グラック教授】 カナダ人なのですね。

【スティーブン】 はい、そうです。

【グラック教授】 なるほど。こういったバックグラウンドは、話をする上でそれぞれに違いを生んでいくでしょう。では、次?

【ヒョンスー】 (ハワイの日本人コミュニティーという印象は)ハワイで博物館研究をしていた日本人の人類学者との出会いから来ています。その方には、学部時代、東京大学に交換留学していたときに会いました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中