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中朝関係

習近平は北朝鮮の金正恩を10月に見限るのか?

2017年9月28日(木)12時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

また、中国人民大学の成暁河(チョン・シアオホー)教授は香港サウスチャイナモーニングポスト紙のインタビューで「誰が先に攻撃しようと、中国は、自国の国益を保護しなければならない。国益の被害を最小化するため、早く行動しなければならない」と語った。 朝鮮半島危機の収拾過程では、中国が最も大きな発言権を持つため、核兵器を除去し、米国が現在のように休戦ライン以南に止まるようにするため、中国が素早く行動する必要があるということだ。吉林省大学の孫興傑(スン・シンチエ)教授も同紙の取材に対し「中朝国境地域で核兵器や難民危機の可能性に対してきちんと準備しなければならない」と話した。

ただ、孫教授は「北朝鮮はすでに核兵器を持っており、過去において核武装国家間で戦争が起きたことはない」と語り、北朝鮮の核兵器保有を既成事実と認めて戦争の可能性は高くないと見ている。 遼寧省社会科学院の呂超研究員は「北朝鮮からの難民大量流入が大きな懸念」としながらも、「これを議論するのはまだ早い。 不測の事態に備えるための前提条件としては、金正恩政権崩壊の可能性が挙げられるが、我々はそのような兆候をまだ見ることはない」と朝鮮半島危機説に一線を引いた。

一方、中国当局も朝鮮半島危機の可能性に備えた動きを見せている。 21日、党中央政治局委員の許其亮中央軍事委員会副主席が、中朝国境地域を管轄している北部の黒竜江省・吉林省・遼寧省の各部隊を視察した。

中国は北朝鮮を再び見限るか?

こうした中国の動きについて韓国側はどう見ているのか。中国専門家である徐鎮英(ソ・ジンヨン)高麗大学名誉教授は「中国は1992年の韓中国交正常化当時、北朝鮮を見放した経験がある。それが今や若手の学者を中心に"北朝鮮あきらめ論"や北朝鮮に最高の制裁を加えなければならないという"'北朝鮮懲罰論"などが台頭してきている」と語っている。

ただ、一方で外交関係者の間では、米朝間の緊張が最高潮に達する10月上旬に、中国がどのような形であれ調停に乗り出すしかないという観測も出ている。 ある消息筋は「来月18日に共産党全国代表大会を控えた習近平国家主席が、行き詰まった北朝鮮問題の解決に乗り出し、国際社会に対して自身の存在をアピールするのではないか」と予測した。

国連安保理決議による経済制裁も、トランプ政権との間で高まる軍事衝突の外交的回避も、すべては習近平の思惑にかかっているようだ。


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