最新記事

テクノロジー

AIの思考回路はブラックボックス

2017年8月4日(金)18時15分
ジョン・フランク・ウィーバー(弁護士・作家)

アメリカでは、第三者が個人情報を利用する場合に本人の同意を得ることや、情報が漏洩した可能性を企業がユーザーに通知することが義務付けられている。だが説明を求める権利は、こうした従来の規制よりもはるかに強力に個人情報を保護する手段になる。

とはいえ、プラス面ばかりではない。ザンクトガレン大学(スイス)のトーマス・ブリ助教は情報公開の必要性を認める一方で、規制が行き過ぎれば開発者の権利が損なわれると懸念する。「アルゴリズムを全て公開しても説明できない判断もある」。機密性の高い情報を公開したくない企業や開発者が、AIの可能性を限界まで追求することに及び腰になる事態も考えられる。

こうした懸念に加えて、アメリカではネット上の個人情報を保護するプロバイダー規制が撤廃されるなど、プライバシー保護に逆行する流れも強まっている。そのため米議会で近い将来、説明を求める権利に類するものが認められる可能性は低いが、個人情報への配慮が必要ないという意味ではない。

【参考記事】ウォール街を襲うAIリストラの嵐

AIの分析精度が上がり、人間社会のAIへの依存が一段と強まるなか、どんな個人情報がどう使われているのかを各ユーザーが知ることの重要性は高まる一方だ。政策決定者は企業の技術革新の足を引っ張ることなく、個人情報の悪用を阻止できるようなバランスの取れた規制を設けるべきだ。

そうなれば、なぜわが家で突然サー・ミックス・ア・ロットが流れたのかという謎も解明できるかもしれない。アマゾンよ、今のアレクサに無理なことは分かっているが、もしも理由を説明できるなら連絡してほしい。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

© 2017, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国10月物価統計、PPIは下落幅縮小 CPIプラ

ワールド

フィリピン、大型台風26号接近で10万人避難 30

ワールド

再送-米連邦航空局、MD-11の運航禁止 UPS機

ワールド

アングル:アマゾン熱帯雨林は生き残れるか、「人工干
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中