最新記事

メッカ巡礼

サウジ国王、カタールからの巡礼者にB777型機7機をチャーター

2017年8月21日(月)16時30分
カラム・ペイトン

イスラム教の聖地メッカの大モスク内のカーバ神殿に集まった巡礼者たち Ali Jarekji-REUTERS

<年に1度の大巡礼ハッジを8月末に控え、断交中のカタールの巡礼者を、聖地のあるサウジアラビアに入国させるかどうかで非難の応酬があったが、サウジ国王がカタール巡礼者のためにボーイング機7機を私費で調達するという太っ腹な解決に>

イスラム教徒がサウジアラビアの聖地メッカを訪れる年に1度の大巡礼「ハッジ」を8月末に控え、サウジアラビアのサルマン国王は、6月に国交を断絶して以来対立が続くカタールの巡礼者をメッカに運ぶため、特別機を私費でチャーターすることを決めた。政治対立が宗教対立に発展するのを防ぐための寛大なジェスチャーだ。

【参考記事】国交断絶、小国カタールがここまで目の敵にされる真の理由

サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国がカタールと断交し、人や物資の往来を禁止したことで、中東は過去数十年で最悪の外交危機の最中にある。カタールの巡礼者受け入れを巡っても一時、両国間に緊張が走ったが、サルマン国王は世界最大級の双発ジェット機である米ボーイング777型機7機をチャーターし、カタールの巡礼者を首都ドーハからサウジアラビア西部の港湾都市ジッダまで運ぶことにしたと、サウジアラビアの国営メディアが報じた。サウジアラビア国営航空会社サウディアによるチャーター便は、出発便が8月22~25日までの間、帰国便はハッジが終了する9月5日に、それぞれ運航する予定だ。

カタールの巡礼者が聖地メッカを訪問しやすいよう、サウジアラビアはカタール国境の唯一の陸路であるサルワも開放した。これにより、カタール国民は大巡礼のためにメッカを車で往復できるようにもなると、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは伝えた。

【参考記事】カタール孤立化は宗派対立ではなく思想対立

カタールは13の要求を拒否

カタールの巡礼者の受け入れは、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と、カタール首長家出身のシェイク・アブドラ・ビン・アリ・アール=サーニーが先週ジェッダで行った会談で合意した。だが宗教的な問題から合意した今回の特例が、政治的な対立の解消につながる可能性は低い。

【参考記事】断交1カ月、サウジはカタールの属国化を狙っている

カタールと湾岸諸国の対立が悪化した発端は、6月上旬にサウジアラビアやエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンなどが、カタールはテロ組織を支援し中東のライバル国であるイランに接近していると非難し、カタールとの外交関係を断絶したこと。

その後4カ国は関係正常化の条件13項目をカタールに突き付けた。カタールの衛星ニュース局アルジャジーラの閉鎖や、イランとの外交関係の縮小、カタールにあるトルコ軍基地の閉鎖などもそれらの要求に含まれていたが、カタールは拒否した。カタールは小国だが、天然ガスの埋蔵量が世界第3位で、中東を統括する米中央軍の基地もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

UBS、資本規制対応で米国移転検討 トランプ政権と

ビジネス

米オープンAI、マイクロソフト向け収益分配率を8%

ビジネス

中国新築住宅価格、8月も前月比-0.3% 需要低迷

ビジネス

中国不動産投資、1─8月は前年比12.9%減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中