最新記事

北朝鮮危機

北朝鮮2度目のICBM発射実験は、アメリカと日韓を分断するワナ

2017年8月2日(水)17時30分
バリー・パベル、チョン・ミン・リー(米大西洋協議会ブレント・スコウクロフト国際安全保障研究センター)

だが、トランプ政権と連邦議会は今、医療制度改革をはじめとする主要な国内問題をめぐって熾烈な権力闘争のただ中にある。アジアやヨーロッパの安全保障(とくに同盟国との関係)については関心が低い。中国と北朝鮮は、そうした力の空白に乗じているのだ。

日本と韓国の間には大きな意見の相違がある。それでも、北朝鮮の金正恩政権が韓国、日本、そしてアメリカに及ぼす脅威は前例のないものであり、戦略的に最優先で取り組むべきだ。アメリカは、韓国と日本をあらゆる手段で守るという意志を明確化し、その広範にわたる攻撃抑止力を行動で示す必要がある。

韓国およびアメリカの左派には、北朝鮮に体制の存続を保証し経済的な見返りを与えれば、核武装を白紙撤回するはずだという見解が根強く残ってきた。しかし、今回のICBM発射実験をみれば、そうした見解はもはや有効性を持たないはずだ。

金体制を倒すのはクーデター

北朝鮮における現体制の存続は100%、国内の矛盾にかかっている。金正恩を権力の座から追いやる役割を担うのは、朝鮮労働党および朝鮮人民軍だからだ。

今日明日に起きるとは考えられないものの、共産圏で唯一、世襲による権力継承が行われている最後のスターリン主義国家である北朝鮮の体制は、国内勢力によるクーデターによって終わりを迎える可能性が一番高い。

日米韓3国の政府は、新たな戦略的脅威に目を向け、北朝鮮、さらには中国に対して一体となって発言し、行動すべきだ。世界はもはや、中国の北朝鮮に対する容認姿勢を見逃すことはできない。

(翻訳:ガリレオ)

This article first appeared on the Atlantic Council site.

Barry Pavel is senior vice president, Arnold Kanter chair, and director of the Brent Scowcroft Center on International Security at the Atlantic Council.

Chung Min Lee
is visiting senior fellow in the Brent Scowcroft Center on International Security's Asia Security Initiative

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イタリア、ウクライナ軍事援助に関する法令の承認延期

ワールド

韓国、日中関係悪化巡りどちらの側にも立たず=李大統

ビジネス

独政府、「自由落下」経済から産業救済強化を=産業連

ワールド

米政権、自動車燃費規制の大幅緩和を3日発表へ=関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中