最新記事

北朝鮮危機

北朝鮮2度目のICBM発射実験は、アメリカと日韓を分断するワナ

2017年8月2日(水)17時30分
バリー・パベル、チョン・ミン・リー(米大西洋協議会ブレント・スコウクロフト国際安全保障研究センター)

北朝鮮が7月28日に行ったICBM「火星14号」2度目の発射実験 KCNA/Reuters

<米シンクタンクの専門家は、今こそアメリカが日本と韓国を守る断固たる意志を示し結束すべきだが、北朝鮮はワシントンが内政でもめている空隙に乗じていると言う>

北朝鮮が7月28日(現地時間)に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したことが、アメリカ国防総省によって確認された。日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾したこのミサイルは、7月4日に発射された最初のICBMと比べて、飛行高度、距離ともに上回るものだ。この性能があれば、アメリカ本土の都市に対する攻撃も可能になる。

【参考記事】北朝鮮初のICBMは日本の領海を狙っていた?

この記事では、国際情勢を専門とする米シンクタンク、大西洋評議会のアナリストによる、今回のミサイル発射に関する分析を紹介する。

        *****

北朝鮮はこれまで、核弾頭も搭載可能なICBMを持つとう目標に向けて邁進してきた。今回の発射実験は、その努力が着実に実を結びつつあることを示している。北朝鮮の狙いは、本土を攻撃することもできるとアメリカを脅すことで、アメリカとアジアの同盟国との間に楔を打つことにある。

【参考記事】北朝鮮電撃訪問以外にない----北の脅威から人類を守るために

今回のミサイル発射により、北朝鮮に対して現状維持政策をとる選択肢はあり得ないことがまたしても裏付けられた。ひとたび「核の盾」を手にすれば、北朝鮮は自信を深め、外交および軍事政策のあらゆる分野で、さらに攻撃的な行動に出る可能性が高い。

アメリカは、従来とは一線を画するこの新たな安全保障上の危機に対抗するため、同盟国との軍事態勢を抜本的に再編する必要がある。

核武装した唯一の全体主義国家

中国にも、北朝鮮を交渉のテープルにつかせるための新たな施策を採るよう引き続き促すべきだ。交渉の目的は、北朝鮮が持つ核兵器およびミサイルによる攻撃能力を削減させ、さらには全廃に追い込むことだ。

金正恩政権による2度目のICBM打ち上げは、北朝鮮が核武装を進めている世界で唯一の全体主義国家であることと考え併せれば、人類存亡の危機と見るべきだ。韓国、日本、アメリカは、3カ国の間に足並みの乱れが生じないよう、万全を期す必要がある。「北朝鮮との対話姿勢」を打ち出した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、志は立派だがタイミングが悪過ぎた。

【参考記事】前のめりの韓国、最低賃金アップで文在寅がダウン

韓国は度重なる北朝鮮の脅しにすっかり慣れっこになってしまい、事態の深刻さに無頓着になっているきらいがある。現在の情勢は保守対革新の対立軸で捉えられるものではなく、韓国、さらには日本の安全保障の根幹に迫る脅威だ。

中国が北朝鮮に自制を求める上で十分な役割を果たしているという誤った通念は、もはや通用しない。たとえトラブルメーカーでも、中国は北朝鮮を戦略的な緩衝帯として重視している。中国にとって、金正恩を権力の座に置いておくことが得策であることは間違いない。アメリカが主導権を取るしかない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英国王夫妻、トランプ米大統領夫妻をウィンザー城で出

ビジネス

三井住友FG、印イエス銀株の取得を完了 持分24.

ビジネス

ドイツ銀、2026年の金価格予想を4000ドルに引

ワールド

習国家主席のAPEC出席を協議へ、韓国外相が訪中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中