最新記事

北朝鮮問題

北朝鮮電撃訪問以外にない----北の脅威から人類を守るために

2017年7月31日(月)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

香港の地下鉄に表れた金正恩とトランプのそっくりさん Bobby Yip-REUTERS

習近平を褒め殺しにしていたトランプも遂に激しい失望を露わにした。軍事先制攻撃の選択はあるが、ピンポイント外科手術以外は犠牲が大きすぎる。制裁などで北は退かない。となればこの段階で食い止める道は一つしかない。

褒め殺しをやめたトランプ

今年4月6日と7日の米中首脳会談以来、トランプ大統領は習近平国家主席を「尊敬する」「彼ならば、きっとやってくれる」と褒めに褒めて、北朝鮮問題の解決を習近平に預けた。

中国もそれなりに努力して、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」を通して北朝鮮を非難。米軍が38度線を越えたら中国は黙っていないが、ピンポイントの「外科手術」なら、米軍の軍事行動を黙認するというところまで行った。

この「ピンポイント的外科手術」とは「核・ミサイル施設のみの破壊」を指しているのだが、暗に「金正恩の斬首作戦」を示唆していると解釈を広げることもできる。しかも、失敗は許されない。先に手を出したからには、絶対に「100%」成功しなければならないのだ。

それ以外の状況で北朝鮮を軍事攻撃した時には、必ず第三次世界大戦に発展する。

中国はもちろん、それを望んでいない。

中国は北朝鮮の核・ミサイル開発を望んでいない

中国はどのようなことがあっても、北朝鮮が核・ミサイルを保有する軍事大国になって欲しくはない。いつ北京にミサイルの照準を絞るか、分かったものではないからだ。

もう一つには、もし北朝鮮が核保有国になれば、必ず韓国もそれを望み、その結果、日本が核保有国になろうとするのは明らかだからだ。それだけは避けたいと思っている。

また北が強くなって南(韓国)をも統一した場合、すぐ隣の吉林省延辺朝鮮族自治州にいる中国籍朝鮮族が「民族としての望郷の念に駆られて」、統一された朝鮮半島に戻ることは不可避で、となれば中国にいる数多くの少数民族の独立を刺激する。それは中国共産党による一党支配体制を崩壊させるので、その意味でも北朝鮮が軍事大国になってしまうことは避けたいのである。

中国は制裁のコマしか持っていない

中国が持っているのは「断油」「中朝国境封鎖」「中朝軍事同盟破棄」という3つのカードだ。しかし、これは「制裁」のカードでしかない。制裁を強化すれば、北はその国へとミサイルの照準を当てるだろう。中朝戦争が始まる。

いかなる戦争であれ、大規模戦争が中国大陸上で始まれば、中国の一党支配体制は崩壊する。社会不安ほど習近平にとって怖いものはない。ましていわんや、今は5年に一度の党大会が待っている。来年3月に開催される全人代で、習近平は二期目の国家主席に就任するので、それまではいかなる事件も起きてほしくない。だから、戦争になることだけは絶対に避けようとするだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ麻薬積載拠点を攻撃と表明 初

ワールド

韓国電池材料L&F、テスラとの契約額大幅引き下げ 

ワールド

ビングループのEVタクシー部門が海外上場計画、企業

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 演習2日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中