最新記事

インドネシア

潜在的未成年性犯罪者の入国を許すな インドネシア 上半期で100人を阻止

2017年7月14日(金)18時40分
大塚智彦(PanAsiaNews)

こうした厳罰化にも関わらず、今年上半期で100人以上がインドネシア入国を試みたとことが判明したことは関係当局に衝撃をあたえた。網の目を潜り抜けて入国した「小児性愛者」や「異常性愛者」も少なからずいるとみて、警察や入管当局が監視体制を強化している。

東南アジア全体での取り組み強化へ

インドネシアと並んで東南アジアで少年少女が犠牲となる性犯罪が多いのがフィリピンとカンボジアとされ、特にカンボジアは未成年幼女、少女売春で知られていた。首都プノンペンから北へ車で約30分、スワイパー村は1990年代には世界中の幼児・小児性愛者が集まり、時には10歳未満の少女、少年が5ドルから30ドルで売られていたという。そのスワイパー村も2000年頃から人権擁護団体が介入、カンボジア政府も本腰を入れて摘発に乗り出した結果、2003年には完全に悪名を返上したとされている。

2015年にはフィリピンで未成年少女とみだらな行為をしてそれを撮影していた横浜の市立中学校元校長が児童買春、ポルノ禁止法違反容疑に問われ、同年12月に横浜地裁で懲役2年、執行猶予4年(求刑・懲役2年)の有罪判決を言い渡されている。元校長は裁判の中で少女を含む約1万人以上とわいせつ行為、撮影に及んだという。

インドネシアでもジャワ島東部の都市スラバヤのドーリー、そして首都ジャカルタ北部のカリジョドなどのその名を知られた売春街がそれぞれの州知事の強い指導力で次々と閉鎖に追い込まれている。

それでもなお、これらの国には貧困から少年少女が売春をせざるを得ない環境が残っている。各国とも経済格差の早期解消が困難な現実を抱える中で、犯罪被害の意識や性病感染のリスクを深く考えられない幼児、未成年が金銭で自らの性的欲求を果たそうとする成人の被害者となっている。

こうした被害を少しでも減らそうとインドネシアが積極的に取り組んでいる「性犯罪を起こす可能性のある人物の水際での発見、入国を拒否する対策」は、フィリピンやカンボジアでも取り組みを本格化させようとしている。入国拒否者の情報は各国間での情報交換ネットワークで関係国に迅速に伝達され、東南アジア全体から締め出す方策がとられようとしている。

訂正)本文中「横浜市立高校校長」とあったのは、「横浜市立中学校校長」の誤りでした。

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など



【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人口学者...経済への影響は「制裁よりも深刻」
  • 4
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウ…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中