最新記事

デザイン

「絵文字」を発明したのは、デザイナーでなく哲学者だった

2017年6月16日(金)14時49分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 グラフィック・デザインとは、情報と人々の理解との間をつなぐ仕組みづくりでもある。「たとえば横軸を時間軸とみなし、人数の多さは人の大きさではなく、並べられた同じ大きさの人の数の違いで示すこと。地図表現などで理解の妨げになる情報を削ぐこともその一環です」

 廣村さんは、アイソタイプのルールにも言及する。8色を基調とし、書体はFuturaのみを使用。ほかにもデータを収集する専門家、ビジュアル化するデザインチーム、両者をつなぐトランスフォーマーというチーム編成で制作に臨むことが特徴的だ。デザイナーではないノイラートが視覚言語の体系を提唱したことはもちろん、いずれの仕事も美しいことにも驚かされる。

「情報の美=ノイラートといってもいいくらいですよね。人は情報を視覚から得て"わかる"喜びを、どこまでも欲する。これは根源的な欲求です」

 ノイラート自身も「近代人は映画やイラストに親しんでおり、これら娯楽の中で、目を通じて楽しみながら知識を得ている。こういった方法を社会的教育にも用いるべき」と述べていた通り、楽しさは意識していた。美はそれを支えるひとつの要素だったのだろう。

 彼は情報に形を与えただけではない。それ以上のものをもたらしたからこそ、アイソタイプは世界中に影響力をもった。情報の美を生んだノイラートの意志は時を超えて、現代のデザイナーにも継承されている。

(Text:立古和智)

廣村正彰 Masaaki Hiromura
アートディレクター
1954年、愛知県生まれ。77年に田中一光デザイン室に入社、88年廣村デザイン事務所設立。2009年毎日デザイン賞、10年グッドデザイン金賞ほか多数受賞。主な仕事にすみだ水族館VI、サイン計画。

※第3回:戦後日本のグラフィック・デザインをつくった男、亀倉雄策

【参考記事】スヌーピーとデザインと村上春樹――ブックデザイン界の巨匠チップ・キッドに聞く


『Pen BOOKS 名作の100年 グラフィックの天才たち。』
 ペン編集部 編
 CCCメディアハウス

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:「神の加護」大義にイラン戦 トランプ政権

ビジネス

消費者態度指数、3月はコロナ禍以来の大幅悪化 判断

ワールド

ロシア、制裁対象LNGを南アジア向けに4割引でオフ

ビジネス

スイス銀行6行、ステーブルコインの実験で協力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 3
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 4
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 8
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 9
    キッチンスポンジ使用の思いがけない環境負荷...マイ…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 5
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 6
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中