最新記事
安全保障

トランプ、最高機密をロシア外相らに話して自慢

2017年5月16日(火)15時20分
ハリエット・シンクレア

ホワイトハウスでロシアのラブロフ(左)らと歓談するトランプ(中央) Russian Foreign MInistry / flickr

<FBI長官解任に続くアメリカ大統領の信じられない振る舞いに、情報機関の職員や安全保障関係者が一斉に反発>

ワシントン・ポスト紙が5月15日付けで報道したところによると、ドナルド・トランプ米大統領は5月10日、ロシアの政府高官に対し、テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)に関する高度な機密情報を漏らした。このことにより、今後の戦略と重要な情報源が脅かされる可能性があるという。

匿名の政府高官や元高官の話として同紙が伝えたところによると、トランプが機密情報を明かしたのは、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相とセルゲイ・キスリャク駐米大使との会談の場。トランプは自慢げに「私には重要な機密情報が手に入る。重要な情報について毎日ブリーフィングを受けている」と語ったという。

【参考記事】ニクソンより深刻な罪を犯したトランプは辞任する

同紙によれば、トランプが漏洩した内容は、機密性の高い情報であるという合意に基づいて同盟国から得られたもので、トランプには、ロシア政府はもちろん、米政権関係者の一部に対してすら、そうした情報を開示する権限はない。

同紙はさらに、トランプがロシアに対するテロ計画の詳細を明かし、計画が発覚したISIS支配下の都市名を挙げたことも報じている。そうした情報開示によって、このテロ計画を暴いたアメリカの同盟国が今後、機密情報の収集に支障を来すかもしれないという。

同盟国より多くをロシアに喋った

ホワイトハウス大統領執務室で行われたロシア側との会談後、米政府高官は、悪影響をできるだけ抑えるため、国家安全保障局(NSA)と中央情報局(CIA)に事態を報告した。

【参考記事】トランプ降ろし第三のシナリオは、副大統領によるクーデター

ある政府高官はワシントン・ポスト紙に対し、「これはコードワードの情報(最高機密のうち、閲覧できる人間が限られている情報)だ」と指摘し、トランプは「ロシアの大使に対して、私たちが同盟国と共有するよりも多くの情報を明かした」と述べている。

報道によれば、トランプはまず、ロシア外相と駐米大使に対し、機内持ち込みのノートパソコンを使ったISISの攻撃計画についての情報を説明し始めた。違法ではないが、極めて異例だ。

【参考記事】トランプとロシアの「疑惑文書」を書いた英元情報部員の正体

トランプはそれに続けて、同盟国が収集した特定の機密情報を詳しく話し始めたという。ただし、使われた情報収集の方法は明かさなかったようだ。ニューヨーク・タイムズ紙はこの情報の開示について、違法ではないものの、アメリカ政府と同盟国との関係に悪影響が及ぶ可能性があるとしている。

政府高官2名はバズフィードの取材に対しこの件を認め、そのうちの1名は次のように述べた。「これまで報道されているよりも、事態ははるかに深刻だ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

モデルナ、1.4億ドル投じてmRNA薬を米国内一貫

ワールド

米英豪、ロシアのウェブ企業制裁で協調 ランサムウエ

ビジネス

ブラックロックの主力ビットコインETF、1日で最大

ワールド

G20の30年成長率2.9%に、金融危機以降で最低
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中