最新記事

ロシア

デモにシリアに内憂外患、プーチン大統領再選に暗雲か

2017年5月8日(月)00時20分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

ペレストロイカと酷似?

モスクワはもう春。晴れると美しいし、生活は「便利で安全」になったと筆者の友人は言う。だから暴力デモなどする気はさらさらないが、政府の連中には責任を取ってほしいという。こんなまともな市民に「アメリカの陰謀」「イスラムテロ」などの脅しはもう賞味期限切れだ。

3月の抗議集会のように、ソーシャルメディアで自発的に集まられたら、当局は手の出しようがない。安定した生活と恐怖政治の後退で権利意識を増した市民――これは、85年にゴルバチョフ書記長がペレストロイカ(改革)を始めたときと酷似している。当時の「上」からの変化と違って今回は、下からの変化に上がかさぶたのように覆いかぶさっているが。

【参考記事】ロシアの地下鉄爆破テロに自作自演説が生じる理由

メドベージェフの特権乱用をビデオにした野党指導者アレクセイ・ナワリヌイは、知名度を上げた。今後は大統領選に向けて当局がナワリヌイに嫌がらせでもしようものなら、逆にその人気に火が付く。「特権を貪る共産党に抵抗して迫害された」というイメージを演出してのし上がったエリツィン元大統領の再来になりかねない。

こうして内政混乱となるのか、アメリカとの対決を口実に締め付けが進むか。どちらも日ロ関係にはマイナスだ。だが、「ロシアはいつも荒れ模様」と言われる。4月末の日ロ首脳会談も綱渡りでいくしかない。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
毎日配信のHTMLメールとしてリニューアルしました。
リニューアル記念として、メルマガ限定のオリジナル記事を毎日平日アップ(~5/19)
ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年4月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ワールド

ウクライナ南部オデーサに無人機攻撃、2人死亡・15

ビジネス

見通し実現なら利上げ、不確実性高く2%実現の確度で

ワールド

米下院、カリフォルニア州の環境規制承認取り消し法案
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中