最新記事

アフリカ

世界一高価で血に濡れたコンゴの「紛争パスポート」

Why is a Congolese Passport More Expensive Than a U.S. One?

2017年4月24日(月)13時47分
コナー・ギャフィー

コンゴの新しい生体認証パスポートは185ドル、うち国庫に入るのは65ドルだけ REUTERS

<先進国よりはるかに高額のパスポート発行手数料の一部は、任期が切れても大統領の座に居座るカビラ大統領の懐を肥やすために使われている可能性がある>

パスポート発行手数料が185ドル(約2万円)――一人当たりの年平均所得が456ドルのコンゴ(旧 ザイール)では手が出ない金額だ。アメリカやイギリスでも100ドル前後のものが、なぜこんなに高いのか。もちろん、そこにはウラがある。

ロイター通信の調査によると、パスポート発行料の大半は、アラブ首長国連邦(UAE)など海外に拠点を構える会社に流れていた。コンゴのジョセフ・カビラ大統領が所有する会社とみられている。

2015年11月、コンゴ政府はベルギーのセムレックス社に生体認証技術を使った新しいパスポートを発注。新しいパスポートの発行手数料は、それまでの100ドルから185ドルに跳ね上がった。世界でも有数の、高価なパスポートだ。

ロイターによれば、185ドルのうちコンゴ政府に納められたのはわずか65ドル。残り120ドルのうち12ドルは首都キンシャサにあるパスポートの管理会社に、48ドルはセムレックスに、60ドルはマキー・マコロ・ワンゴイという人物が所有し、湾岸諸国に拠点を置くLRPSという会社に支払われる。

【参考記事】コンゴのデモ弾圧は、数百万人が死んだ内戦再燃の前触れだ

セムレックス、LRPS、カビラ大統領のいずれも、ロイターの調査に回答せず、セムレックスからは本誌の電話にも返事がない。

企業記録によると、ワンゴイはカビラの親族と共にいくつかの会社の株主になっている。このうち2社でワンゴイはマコロ・ワンガイ・カビラの名前を使っており、2016年12月のブルームバーグの調査で、カビラ大統領の姉妹と判明した。

このことが発覚すると、コンゴの主要野党は、4月7日にカビラが指名したブルーノ・チバラ首相に対し、パスポート代金の使途を明らかにするよう要求した。「チバラはまず身の潔白を証明すべき。話はそれからだ」と、野党連合の指導者、フェリックス・チセケディは言った。

【参考記事】コンゴを引き裂く2つの殺戮部隊

権力の座に居座る大統領

カビラは2016年、憲法が規定する2期の在任制限を迎えたが、予定されていた総選挙の実施を拒否し、政権の座に居座った。以来コンゴでは反政府武装勢力と政府軍の間で衝突や犠牲が相次いでいる。

4月初めにも、コンゴ中部の中央カサイ州で集団墓地が見つかっている。国連幹部の話によると、集団墓地の数は全部で23に及ぶ。中央カサイ州とその周辺では昨年、カビラ大統領に反発する武装勢力が政府軍と衝突し、国連によると400人以上が死亡した。

【参考記事】コンゴ「武器としての性暴力」と闘う医師に学ぶこと

カビラ政権は有権者登録名簿の更新が終わる2017年末までには選挙を実施するとしているが、準備に進捗がないことから再び与野党の緊張が高まっている。

ニュース速報

ビジネス

日産自、4―6月期営業益12.8%減 米市場鈍化で

ビジネス

独VW、ディーゼル車400万台の修理を提案へ=CE

ビジネス

スイスフランが2年半ぶり安値、中銀の金融緩和続くと

ビジネス

VW第2四半期営業益2倍以上に、コスト削減と中核ブ

MAGAZINE

特集:「イスラム国」の子供たち

2017-8・ 1号(7/25発売)

過激なイデオロギーに感化された子供たちや帰還兵によってより潜在化するテロ組織ISISの恐怖

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    エリザベス女王91歳の式典 主役の座を奪ったのはあの2人

  • 2

    ジャスティン・ビーバー 外国で激怒された6つの御乱行

  • 3

    ダイアナ元妃は、結婚前から嫉妬に苦しんでいた

  • 4

    「ジハードって楽しそうだ」ISIS崩壊後、洗脳された…

  • 5

    シャーロット王女は「公務のプロ」 監視カメラが捉…

  • 6

    株価はいつ暴落するのか

  • 7

    アメックスから見た、日本人がクレジットカードを使…

  • 8

    シングルペアレント世帯の貧困率が世界一高い日本

  • 9

    トランプ大統領、トランスジェンダーの米軍入隊を禁…

  • 10

    スーツはおしゃれの道具じゃない、「細身」では信用…

  • 1

    トランプに「英語を話さない」と言われた昭恵夫人、米でヒーローに

  • 2

    エリザベス女王91歳の式典 主役の座を奪ったのはあの2人

  • 3

    ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由

  • 4

    中国人の収入は日本人より多い? 月給だけでは見え…

  • 5

    北の最高指導者が暗殺されない理由

  • 6

    宇宙からのメッセージ!? 11光年先の惑星から謎の信号

  • 7

    ダイアナ元妃は、結婚前から嫉妬に苦しんでいた

  • 8

    米学生は拷問されたのか? 脱北女性「拷問刑務所」…

  • 9

    シャーロット王女は「公務のプロ」 監視カメラが捉…

  • 10

    アメックスから見た、日本人がクレジットカードを使…

  • 1

    中国「三峡ダム」危機--最悪の場合、上海の都市機能が麻痺する

  • 2

    トランプに「英語を話さない」と言われた昭恵夫人、米でヒーローに

  • 3

    アメックスから見た、日本人がクレジットカードを使わない理由

  • 4

    米学生は拷問されたのか? 脱北女性「拷問刑務所」…

  • 5

    エリザベス女王91歳の式典 主役の座を奪ったのはあ…

  • 6

    ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由

  • 7

    「地球の気温は250度まで上昇し硫酸の雨が降る」ホー…

  • 8

    ダイアナ元妃は、結婚前から嫉妬に苦しんでいた

  • 9

    中国人の収入は日本人より多い? 月給だけでは見え…

  • 10

    北の最高指導者が暗殺されない理由

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

全く新しい政治塾開講。あなたも、政治しちゃおう。
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月
  • 2017年2月