最新記事

自動車

トランプの燃費規制緩和、メーカー側の勝利か

2017年3月25日(土)10時08分

3月23日、トランプ米大統領(写真)は先週、オバマ前大統領時代に決まった自動車の燃費基準を見直すと表明したが、輸出に厳しい基準を求められる自動車メーカーの状況などを踏まえると、見直しによる影響は基準達成を数年遅らせる程度にとどまりそうだ。 ミシガン州にある自動運転車技術の試験施設で15日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

トランプ米大統領は先週、オバマ前大統領時代に決まった自動車の燃費基準を見直すと表明し、「米自動車産業への攻撃は終わった」と述べた。しかし燃費の良い車を求める消費者や、輸出に厳しい基準を求められる自動車メーカーの状況を踏まえると、見直しによる影響は基準達成を数年遅らせる程度にとどまりそうだ。

見直しの対象は、2025年までに平均燃費性能を1ガロン当たり54.5マイルに倍増する基準。コストが掛かり過ぎ、雇用が奪われると訴えてきたメーカー側の勝利と言える。

ただフォード・モーターのボブ・シャンクス最高財務責任者(CFO)は23日の投資家向け電話会議で「いかなる形であれ撤回を求めているわけではない。達成すべき水準について話し合いたいだけだ」と述べた。

また、無公害車(ZEV)計画を採用するカリフォルニア州を含む10州は、前政権が決めた基準を堅持する方針。これらの州は米自動車販売の約3割を占める。

アリックスパートナーズのマネジングディレクター、マーク・ウェイクフィールド氏は、米国内で基準が2分し、「メーカーが同じ車種について2つの異なる基準に合ったバージョンを製造せざるを得なくなれば、コストが高くなるかもしれない」と懸念する。

オバマ政権時代の規準撤回を求めていた米国自動車工業会(AAM)は23日、ホワイトハウスに書簡を送り、全米の統一的な基準を維持するためカリフォルニア州との協議を早急に始めるよう促した。

影響力小さいEPA

センター・フォー・オートモティブ・リサーチの労働・産業グループ・ディレクター、クリスティン・ジチェク氏は、米国の基準が撤回されれば中国や欧州など、より規制の厳しい地域への自動車輸出が難しくなると予想。このため「(規則が)撤回されることはなさそうだ。せいぜい厳しい基準の達成時期が遅れる程度だろう」と言う。

アリックスパートナーズのウェイクフィールド氏は、米国が後ずさりしている間に世界最大の市場である中国が電気自動車を推進し続ければ、「米国から中国にある程度投資が移る」恐れがあると話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中