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トランプ豹変でプーチンは鬱に、米ロを結ぶ「スネ夫」日本の存在感

2017年3月10日(金)11時00分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

「反米」は賞味期限切れ

さらに中国はICBM(大陸間弾道ミサイル)をロシアとの国境の黒竜江省に配備し始めたと報じられている。ロシアは「アメリカに向けられたもの」と無関心を装いつつも、先月中旬には中国との国境地方で、核弾頭搭載可能な短距離弾道ミサイル「イスカンデルM」の使用も含めた軍事演習を展開。明らかに中国への威嚇を行っており、同盟関係を結ぶどころではない。

ロシアは大統領選挙を1年後に控える。今のところプーチン以外に有望馬はいない。クリミア併合以来、反米機運をあおって90%近くもの驚異的支持率を稼いできたが、反米ももう賞味期限切れだ。

【参考記事】トランプ政権下、日米同盟は本当に生き残れるか

これまである時はチェチェンのテロ、ある時は共産党、ある時はアメリカを敵に仕立てて票を得てきたプーチンは、国民の生活向上という「正味の実績」で票を稼がないといけない状況に追い込まれている。

北方領土問題でいま譲るわけにはいかないが、東の隣人・日本にはもう少し愛想よくしよう──プーチンがこう考えても不思議でない。スネ夫かポチか対等の同盟国かは知らないが、トランプの信任を得ている安倍晋三首相は、米ロ間を仲介する姿勢を取ることができる。

大統領選が終わるまでは日ロ関係は大きく動かないだろうが、日ロ首脳会談での日本の立場はほんの少しよくなった。

[2017年3月14日号掲載]

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