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米中関係

マティス国防長官日韓訪問に中国衝撃!――「狂犬」の威力

2017年2月6日(月)06時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

米トランプ政権のマティス国防長官 Jonathan Ernst-REUTERS

マティス国防長官の日韓訪問に衝撃が走った。中国では連日のように特集番組を組み、アメリカこそが地域の平和を乱していると攻撃。しまいにはCCTVにキッシンジャーを登場させて、アメリカを批判させる始末だ。

東北アジア安全保障を重視したトランプ政権

マティス国防長官が最初の訪問国として韓国と日本を選んだ。トランプ政権の閣僚という観点から見ても、初めての外国訪問である。おまけに国務長官ではなく国防長官が、最初に外国を訪問し、かつヨーロッパではなく韓国と日本を選んだという意義は非常に大きい。トランプ政権のアジア太平洋地域に対する安全保障問題への関心の高さをうかがわせるからだ。

大統領選期間中、「世界の警察にならない」と何度も宣言することによって中国を喜ばせていたトランプ氏が、当選するや、矢継ぎ早にレックス・ティラーソン国務長官、ジェームズ・マティス国防長官、あるいは新設した国家通商会議のピーター・ナバロ委員長など、錚々たる対中強硬派で布陣を揃えたことだけでも、中国にとっては十分に衝撃的だった。

かてて加えて、政権誕生から2週間も経たないで国防長官が韓国日本を訪問するとは何ごとか。その戸惑いようも、想像がつくだろう。

マティス国防長官は、2月2日に訪韓するなり、龍山(ヨンサン)駐韓米軍司令部を視察し、午後には政府ソウル庁舎と大統領府を訪問して、黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行首相や金寛鎮(キム・グァンジン)国家安保室長と会談した。3日には尹炳世(ユン・ビョンセ)外相や韓民求(ハン・ミング)国防相とも会談。

会談ではいずれも、アメリカが米韓同盟を重視していることを強調し、北朝鮮の脅威に対抗する固い意志に変わりはないことを確認。また終末高高度防衛ミサイル(最新鋭迎撃ミサイル)THAADの年内配備も確認しあっている。

3日の午後には訪日し、安倍首相と対談した。国防長官なので「表敬訪問」と位置付けながらも、事実上の日米(首脳級)対談で、10日からの日米首脳会談の準備段階の感がある。

安倍首相との会談では、韓国同様、日米同盟強化の重要性を強調し、尖閣諸島が日米安保第5条の防衛対象であることを明言した。また、北朝鮮への対応とともに、中国の東シナ海や南シナ海における「力による」膨張に対する警戒感とさらなる協力を確認し合った。

中国の猛烈な抗議報道――キッシンジャーまで駆り出して

これに対して中国は尋常ではない抗議を表明し、中央テレビ局CCTVは連日マティス国防長官の訪韓訪日に関する特集番組を組み、1時間ごとに報道して、くりかえしアメリカとともに日本と韓国を批判した。

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