最新記事

人道問題

コンゴ「武器としての性暴力」と闘う医師に学ぶこと

2016年10月2日(日)20時14分
米川正子(立教大学特任准教授)、華井和代 (東京大学公共政策大学院)



 第一に、武装勢力は実効支配した鉱山の周辺地域で性暴力をふるうことによって、住民に恐怖心を植え付け、性暴力のサバイバーとその家族だけでなく、コミュニティ全体を弱体化させて支配下に置くことができる。それによって、武装勢力にとって邪魔な存在である資源産出地域の住民を、他の地域に強制移住できる。と同時に、鉱山労働者の入山や、産出された鉱物、輸送手段などに「課税」し、利益を得ることができるようになる。

 第二に、性暴力は不名誉なこととしてサバイバーやその家族を苦しめ、恥や無価値であるといった感情をもたらす。その結果、住民は士気喪失して、政府や武装勢力に立ち向かう気力を失ったり、女性が主に中心的役割を果たしている農業や商業が破綻してしまう。最終的に住民は武装勢力が実効支配する鉱山での労働に依存せざるを得なくなる。

 第三に、コンゴ東部における性暴力は典型的な(集団的)レイプだけではなく、木の枝、棒、びん、銃身や熱い石炭などが性器に挿入されたり、時には集団レイプの後、膣が撃たれることもある。なぜここまで残虐な方法をとる必要があるのか。それは女性の性器が機能しなくなると子どもを産めなくなり、それが長期的に現地の人口減少につながるからである。その結果、武装勢力はますます資源産出地域を支配しやすくなる。

 このような鉱物資源と性暴力の関係について、国連も、「資源と鉱山集落の支配をめぐる武装勢力間の競争は、増加している文民の移動、人身売買や性的虐待と関係している」と明記している(United Nations Security Council, S/2015/203,23 March 2015, 3)。ムクウェゲ氏らの調査でも、鉱物が豊富な地域と性暴力の発生地が一致していることが指摘されたが、それはあくまでも限られた地域のみであり、さらなる調査が必要だと明記している。

 こうした資源利用によるコンゴ東部の「紛争状態」の長期化は、グローバル経済を通じて日本の私たちの暮らしともつながっている。特に紛争資金源として利用されている4鉱物(スズ、タングステン、タンタル、金)は、世界各地で産出される鉱物と混ざって、携帯電話やパソコンなどの電子機器から自動車や航空機にいたるまでの幅広いあらゆる工業製品に使用されている。

日本における映画上映の意義

 日本において、映画『女を修理する男』を上映する動機は三点ある。

 第一に、コンゴ紛争が勃発してから本年で20年が経つため、この機にコンゴの紛争について振り返る機会をつくりたかったことである。1994年に起きた隣国ルワンダのジェノサイドを知っている日本人は多数いる。それに対して、それがコンゴに飛び火してコンゴ大戦が勃発したことを理解している人は少数派である。

ニュース速報

ワールド

韓国、対空ミサイルの実射訓練に成功

ワールド

金正恩氏、最先端兵器を「より多く製造へ」 科学者ら

ビジネス

長期金利想定、過去最低に並ぶ1.1%で調整=18年

ワールド

原油先物が上昇、米原油在庫は予想以上の取り崩し

MAGAZINE

特集:日本を置き去りにする作らない製造業

2017-12・19号(12/12発売)

ものづくり神話の崩壊にうろたえる日本。新たな形の製造業が広がる世界

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    推定500歳!地上で最古の脊椎動物はガリレオの時代から生きてきた

  • 2

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営者が語る

  • 3

    高いIQは心理・生理学的に危険――米研究

  • 4

    ビットコインのために自宅を担保にするバカ、米当局…

  • 5

    キャノーラ油で認知症が悪化する──米研究

  • 6

    小さな飛行士が壮大な宇宙の旅に

  • 7

    北朝鮮「亡命兵士」の腸が寄生虫だらけになった理由

  • 8

    料理は科学!スクランブルエッグは空気と塩でこんな…

  • 9

    EVとAIで人気のテスラ ささやかれる「自動車製造を…

  • 10

    犬が「噛む」のはワケがある 

  • 1

    金正恩を倒すための「斬首部隊」に自爆ドローンを装備

  • 2

    「ICBM発射映像に炎に包まれる兵士」金正恩が目撃しながら大喜びか

  • 3

    北朝鮮外務省が声明「戦争勃発は不可避、問題はいつ起きるかだ」

  • 4

    推定500歳!地上で最古の脊椎動物はガリレオの時代か…

  • 5

    EVとAIで人気のテスラ ささやかれる「自動車製造を…

  • 6

    2017年は中流でもビットコインを買える最後の年にな…

  • 7

    キャノーラ油で認知症が悪化する──米研究

  • 8

    高いIQは心理・生理学的に危険――米研究

  • 9

    中国軍駐留で北朝鮮の非核化を

  • 10

    犬が「噛む」のはワケがある 

  • 1

    北朝鮮「亡命兵士」の腸が寄生虫だらけになった理由

  • 2

    北朝鮮「兵士亡命」が戦争の引き金を引く可能性

  • 3

    北朝鮮「亡命兵士」の命を脅かす寄生虫の恐怖

  • 4

    金正恩を倒すための「斬首部隊」に自爆ドローンを装備

  • 5

    「ICBM発射映像に炎に包まれる兵士」金正恩が目撃し…

  • 6

    「英王室はそれでも黒人プリンセスを認めない」

  • 7

    北朝鮮外務省が声明「戦争勃発は不可避、問題はいつ…

  • 8

    「セックスしている子もいるけど私はしたくない」 …

  • 9

    推定500歳!地上で最古の脊椎動物はガリレオの時代か…

  • 10

    「軍事衝突は近い。国防総省は在韓米軍の家族を退避…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

胎内のような、安心感のなかでイマジネーションを膨らませる。
日本再発見 シーズン2
ニューズウィーク日本版デザイナー募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 特別編集

最新版 アルツハイマー入門

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年12月
  • 2017年11月
  • 2017年10月
  • 2017年9月
  • 2017年8月
  • 2017年7月