最新記事

米大統領選

トランプとトランプ陣営、「移民演説」の解釈で大混乱

2016年9月5日(月)18時30分
ニコラス・ロフレド

Nancy Wiechec-REUTERS

<アリゾナ州フェニックスで8月31日にトランプが行った移民についての演説は、一時のソフト路線から再び強硬路線に戻ったかのように過激な内容だった。陣営は釈明に追われたが、その言い分を聞けば聞くほど、何が本当なのかわからなくなる>(写真はフェニックスでの演説の日に行われた反トランプ派のデモ)

 米共和党の大統領候補ドナルド・トランプの移民対策が迷走している。トランプは8月に入って移民に対する厳しい姿勢を和らげていたが、先週水曜日に米アリゾナ州フェニックスで行った演説で、再び過激な言葉を連発したばかり。

 それにもかかわらず、日曜の朝相次いで報道番組に出演したトランプの側近2人が、「不法滞在者はだれであろうと国外退去させる」と言ったトランプの発言の釈明に追われた。トランプの政策は不法移民の中でも「犯罪者」だけを対象にしており、推定1100万人の不法移民を一斉に国外退去させるものではないと主張したのだ。

【参考記事】トランプのメキシコ訪問と移民政策の奇々怪々

 トランプの懐刀で元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニは、米CNNの番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」に出演、フェニックスでのトランプの演説は、出馬当初からの移民に対する強硬路線に戻るものだという見方を否定した。トランプは移民の家族を引き裂くことを望んでいないとも念を押した。

【参考記事】戦死したイスラム系米兵の両親が、トランプに突きつけた「アメリカの本質」

 もう1人、トランプ陣営の選挙対策責任者のケリーアン・コンウェイも米ABCニュースの「ディス・ウィーク」で、犯罪者の不法移民を国外退去させた後に、国内に残る不法滞在者への対応をどうするかは定かでないと語った。

誰であろうと容赦はしない

 だが、水曜のトランプの演説は極めて明解。あいまいなところなどどこにもなかった。

「トランプ政権では、あらゆる移民法を動員する。他の法律と同様、優先順位はつける。ただし今のオバマ政権とは違い、誰であろうと一切容赦しない。(強制送還を取り仕切る)米移民税関捜査局(ICE)や国境警備隊の職員には、本来の職務を執行してもらう。アメリカに不法入国した者は誰であろうと国外退去処分にする。それでこそ法律であり、それでこそ国家だ。現在アメリカで在留資格を求めている不法移民に残された道は一つしかない。母国に帰り、新たな移民制度のルールに従い、再入国を申請することだ」。

 さらにトランプは、メキシコとの国境に壁を造り、その費用はメキシコに払わせるという持論を繰り返した。

【参考記事】トランプは、ヨーロッパを不安にさせる「醜いアメリカ人」

 ジュリアーニは最近、トランプの移民政策が軟化する可能性を示唆していた。だが彼は、アリゾナでのトランプの演説について、言葉は荒々しい印象になっても最近の柔軟な方針から逸脱はしていないと主張した。「注意して演説を読み返せば、発言は一貫しているのが分かる。それに彼が不法移民と言っているのはほとんどの場合、犯罪を犯した不法移民のことだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パプアニューギニアで大規模な地すべり、300人以上

ワールド

米、ウクライナに2.75億ドル追加軍事支援 「ハイ

ワールド

インド総選挙、首都などで6回目投票 猛暑で投票率低

ワールド

中国、台湾周辺での軍事演習終了 46機が中間線越え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ

  • 2

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 3

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリン・クラークを自身と重ねるレブロン「自分もその道を歩いた」

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 7

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 8

    テストステロン値が低いと早死にするリスクが高まる─…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    あり得ない密輸!動物87匹をテープで身体に貼り付け…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 7

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 8

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中