最新記事

スポーツ

インドはなぜ五輪で勝てない?

2016年9月2日(金)16時40分
アキレシュ・ピララマリ

Stoyan Nenov-REUTERS

<リオ五輪のメダル獲得数が2個に終わったインド。中国とならぶ「新興大国」が国際大会で活躍できない理由>(写真はリオ五輪開会式のインド選手団)

 取り立てて予想外の出来事ではないが、リオデジャネイロ五輪でインドはメダル数という意味で惨敗を喫した。それも欧米諸国だけでなく、中国やブラジルといった同じ新興国と比べても、大きく見劣りのする「2個」に終わったのだ。

 あるコメンテーターは、「インドが1900年以降オリンピックで獲得したメダル数は、(アメリカの競泳選手)マイケル・フェルプスが獲得したメダル数と同じ」と指摘した(いずれも28個)。

 なぜ、インド選手はオリンピックでもっと好成績を挙げられないのか。政府に強化プログラムを組む予算がないはずはない。何しろインドは、月や火星に探査機を送り込むカネはある。近年の中間層の拡大で、個人トレーナーやエアコン付きのジムの利用者も増えた。

【参考記事】階層、意思決定、時間感覚......インド事業の文化の壁

 もちろんリオでのインド選手の活躍を軽視するつもりはない。多くは行政当局の無関心と怠慢を乗り越え、ほぼ自力で戦ってきた。その結果、バドミントン(女子シングルス)でシンドゥ・プサルラが銀メダルを、レスリング(フリースタイル女子58キロ級)でサクシ・マリクが銅メダルを獲得した。

 インドの女子体操選手として52年ぶりの五輪出場を果たしたディパ・カルマカルは、跳馬で4位と善戦。18歳の女子ゴルフ選手アディティ・アショクは決勝ラウンド進出を果たした。女子3000メートル障害に出場したラリタシバジ・ババルは、陸上競技で決勝に残った2人目のインド人女性となった。

 リオで好成績を挙げたインド人選手に共通するのは、全員女性であること。彼女たちは、当局の怠慢だけでなく、男子選手のほうがもてはやされる社会的風潮も乗り越えてきた。

 実際、「インドには今もオリンピック規格の平均台や段違い平行棒がない」と、カルマカルは嘆く。マリクの出身地である北部のハリヤナ州では、ごく最近まで女性がレスリングの試合に出場することに大きな反発があった。

クリケット以外は関心なし

 インド選手がオリンピックで好成績を挙げられない背景には、構造的な理由がある。例えば、多くの人が栄養不良でスポーツをやれる状態にない点や、運動を楽しむ習慣もないことだ。クリケット以外は、高校や大学でスポーツが重視されておらず、世界レベルの選手には不可欠のスポーツの早期教育がないこともネックになっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は小反発、FOMC通過で 介入観測浮

ビジネス

国債買入の調整は時間かけて、能動的な政策手段とせず

ワールド

韓国CPI、4月は前年比+2.9%に鈍化 予想下回

ビジネス

為替、購買力平価と市場実勢の大幅乖離に関心=日銀3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中