最新記事

難民危機

2つの難民サミット、世界にまだできること

2016年9月20日(火)18時52分
デービッド・ミリバンド(元英外相)、マデレン・オルブライト(元米国務長官)

 潘基文主催のサミットの目的は、最大の難民受け入れ国を支援し、各国が責任や負担をより公平に分担し、難民や移民の受け入れに関する新しい国際的な原則を確立することだ。先月国連が発表した「ニューヨーク宣言」の草案からは、難民支援に向けて各国が責任を共有できる意義のある変革をもたらすというより、すでに合意された原則の繰り返しに過ぎないという印象を受けた。実際にそうならがっかりだ。膨大な数の難民を抱える最中に、国際社会として具体策に欠ける単調な共同声明を発表して終わりというのでは許されない。各国が難民問題に対する責任を共有し、実行力のある関与を強めることが必要だ。

 もし国連のサミットが期待外れに終われば、バラク・オバマの「難民に関するリーダーズ・サミット」の重要性が一層高まる。こちらのサミットの主要目的は、難民問題の解決に向けて各国に拠出金や受け入れ数の増加を求めるのと同時に、受け入れ国側でも難民のための雇用や教育の機会を創出することだ。アメリカがお手本となってグローバルな人道支援への関与を広めるチャンスだが、参加各国は会期中も終了後も一貫して、以下の3つの課題に取り組まなければならない。

2級市民扱いをするな

 第1に、難民の受け入れ国に対する支援の在り方を大変革すること。難民の出身国のうち約85%は経済協力開発機構(OECD)に加盟していないような貧しい国々だ。潘基文は今年になって、「各国政府や地域コミュニティー、民間部門や援助機関が協力して、危機的状況に置かれた人々のために取り組む新しい支援モデル」を提唱した。難民の受け入れ国は、難民に安全で尊厳ある生活環境を提供するために、より多くの資金や援助を必要としている。

 第2に、支援国は難民の自立を支援しなければならない。難民キャンプの住人たちは、誰かの世話にならなければ生きられないという罠に落ちた永遠の2級市民のような気持ちでいる。世界銀行の試算では、レバノンのシリア難民が1%増えるごとに、レバノンのサービス輸出は1.5%増えるという。つまり、難民受け入れの恩恵をフルに享受するためには、難民に働く機会を与えなければならないのだ。雇用創出の上で指導的な役割を果たすべきは、世界銀行や民間セクターだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中