最新記事

北欧

英EU離脱をノルウェーはどう見たか「ノルウェーモデルはイギリスには耐えられない」

 ノルウェーモデルは「植民地モデル」だとGKは例える。「植民地の歴史で知られるイギリスが、ブリュッセル下に入ることになる。皮肉な運命だ」

 ノルウェーとイギリスの今の大きな違いは、ノルウェーはもともとEUとは婚姻関係にはないのに対し、イギリスは離婚届を突き付けた側だということ。ドイツのアンゲラ・メルケル首相が述べたように、離脱しながら特権だけを享受し、抜け道から単一市場にアクセスできるほど現実は甘くない。

Brexitにニヤリ?「この騒動に、ノルウェーも便乗しちゃおう」

 EUが危惧するのは、イギリスを皮切りに、他国がBrexitに追随することだろう。これ以上のファミリー分裂は避けたいところだ。そこに、家の外にいるノルウェーの一部が、この機会を利用しようと動き始めた。イギリスとタッグを組み、「ノルウェーモデル=EEAの変革」だ。

EUお家騒動は、非加盟国ノルウェーにプラスか。EEA議論が再燃中

 ノルウェーモデルの見直しについて、最初に声を挙げ始めたのは複数の左寄り小政党。極左・赤党の党首は、「EEAについての国民投票を!」と、仰天発言をし始めた。 まさかの「#Noexit」?

 EEAはEUへの別口切符だったので、ノルウェーは完全に手放そうとは思っていないだろう。可能性として否定できないのが、現在のノルウェーモデルの進化とEUとの新たな関係を問う国民投票だ。Brexit騒動を機会に、EUとの新しい関係性に期待する声は取材先で多く聞こえてくる。

ノルウェーモデルも見直しを

 28日、左派社会党の党首は取材で「市場を支配するEUは民主的ではない」と語った。「Brexitはノルウェーにプラスの影響を及ぼすかもしません。イギリスが、現在のEEAを別の形で望むのであれば、ノルウェーとの協定ももっと自由になる可能性がある。ノルウェーが今よりも自分たちで決められるように」。この騒動をきっかけに、協定内容を修正する動きにつなげられるのではと語る。

 20日にEU賛成派とみられる層が多く集まったGKによる集会でも、「EUとの新しい協定を問う国民投票を、2019年あたりに実現できれば!」と希望で胸を膨らませていた。会場には首相の側近もいた。

孤立するイギリスに、ノルウェーは手を差し伸べるか

abumi4-2.jpg
国民投票当日のノルウェーの全国紙アフテンポステンの表紙「今日、イギリスは欧州を分裂させるかもしれない」 Photo:Asaki Abumi

 首相率いる保守党は様子を伺っているようだ。国民投票運動で大きな影響力をもつ「EU反対」団体は、ノルウェーモデルの見直しを後押ししている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾、ウクライナで実戦投入のドローン技術導入へ 中

ビジネス

利上げ継続姿勢も、経済・物価「下振れリスク大きい」

ワールド

焦点:関税交渉まとまらず、石破政権 参院選控え「国

ワールド

世界石油需要、20年代末まで増加 中国は27年ピー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中