最新記事

災害情報・安否情報

熊本地震、信頼できる災害情報・安否情報をネットで確認する

2016年4月19日(火)19時40分
山路達也

3.11で活躍した、Googleのクライシスレスポンス

 熊本地震では、すでに大手事業者を中心として災害情報がネットで積極的に提供されている。日本においてネットを活用した災害支援が本格的に行われるようになったのは、2011年の「東日本大震災」、いわゆる3.11からだ。中でも活躍が目立ったGoogleのクライシスレスポンスについて、簡単に紹介しておきたい。

 Googleの米国本社には、世界中の大規模災害に速やかに対応するため常設のクライシスレスポンスチームがある。大災害が起こると、各国の担当者と連携してクライシスレスポンスサイトを立ちあげることになっている。3.11では地震発生が発生から1時間46分後の16時32分にクライシスレスポンスサイトが立ち上がり、安否確認情報サービスのパーソンファインダーが公開された。ちなみに、今回の熊本地震でも地震発生から1時間半以内にパーソンファインダーの提供が開始されている。2010年1月のハイチ地震で最初に使われたパーソンファインダーは改良が重ねられ、わずかな手順でサービスを開始することができるように工夫されているのだ。

 3.11では、避難所に張られている避難者の名簿を(管理者の許可を得た上で)有志が撮影して、Googleの画像共有サービスに投稿。社内外のボランティアが手書きで書かれた名前をテキスト入力し、パーソンファインダーに入力していった。最終的にボランティアがよって入力された安否情報は14万件。個人が入力した情報、テレビなどのメディアからの情報も合わせると、パーソンファインダーには67万件もの安否情報が入力された。

 パーソンファインダー以外にもGoogleは、YouTubeで地上波のニュース番組を無料配信、ホンダなどの提供していた自動車通行実績情報をGoogleマップで表示、高精細な衛星写真・航空写真の提供、ボランティアとコラボした生活救援情報の提供といったさまざまな取り組みを行った。

 注目すべきは巨大IT企業1社が災害支援活動を行ったのではないと言う点だろう。ボランティアや公的機関、他分野の企業などと柔軟につながっていくことで、迅速かつ的確な情報提供が実現されていったのである。
○参考:『Googleの72時間 東日本大震災と情報、インターネット』林信行 著、山路達也 著

 今回の熊本地震はまだ大きな揺れが続き、予断は許されないが、3.11で得られた貴重な情報連携のノウハウが活用されることを期待したい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

UAE、イエメンから部隊撤収へ 分離派巡りサウジと

ビジネス

養命酒、非公開化巡る米KKRへの優先交渉権失効 筆

ビジネス

アングル:米株市場は「個人投資家の黄金時代」に、資

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック小幅続落、メタが高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中