最新記事

朝鮮半島

北朝鮮ミサイル発射に中国はどう対処するのか?

2016年3月21日(月)22時20分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

――モスクワは対北朝鮮への(アメリカによる)単独圧力を認めない。なぜなら国連安保理こそが制裁を決定することができる国際社会の意志決定だからだ。私たちの出発点はあくまでも安保理制裁の合法性であり、国際社会が一致して決定したことに基づいて行動すべきである。私たちは絶対に単独の圧力のかけ方を認めない。国連安保理の決議は何だったのか。全ての関係国は国連安保理精神に基づいて行動すべきで、朝鮮半島安定のためにはその決議を遵守すべきだ。

 中国メディアはさらに、ロシア科学院東方研究所・蒙古朝鮮研究室のウォロンゾフ主任が「アメリカは北朝鮮に対して単独制裁をすべきではない」と言ったことを大きく報道し、ロシアが「アメリカ」と名指しで、史上最大規模の米韓合同軍事演習を非難してることを強調している。中米関係への配慮からか、中国政府の公式見解としては「アメリカ」という名指しは避けている。

 筆者が取材した中国政府高官は、上記の「4」に関して、激しい口調で以下のように述べた。

――アメリカは国際社会のルールを守り、国連安保理で決定した制裁決議以上の圧力を単独に北朝鮮に掛けるべきではない。これがどのような結末を招く危険性を孕んでいるかを、中東情勢で学習すべきだ。アメリカはかつてリビアのカダフィ大佐を暗殺してリビアをテロリストの温床とさせてしまった。アメリカの介入がなければ、ここまでのISの恐怖は生まれなかったはずだ。1967年(の政権掌握)から暗殺されるまで、カダフィはそれなりにリビアを豊かな国へと変えていった。しかしアメリカが率いた大量爆撃作戦によりリビアは破綻し、今ではテロリストISの温床になってしまったのだ。ISの存在により、世界がどれだけの恐怖に追い込まれているか考えてみるといい。

 イラクに関しても同じだ。国連安保理の決議なしに、アメリカはイラクに大量破壊兵器があるとして一方的に先制攻撃したが、結局、大量破壊兵器は見つからなかった。サダム・フセイン死刑に成功したアメリカが中東世界に残したものは何だったのか。テロリストISの恐怖を全世界に拡散させたことだ。

 同様のことを、今度は北朝鮮をターゲットとして断行し、東アジアを第二の中東にしてほしくない。自分たち(アメリカ)は遥か遠くにいて安全かもしれないが、中国にとっては「玄関先」だ。人の家の玄関先で、わざわざ混乱を起こすことをすべきではない。

 アメリカにこそ、国連安保理決議を遵守すべきだと、われわれは言いたい。そうでなければ、問題の解決どころか、取り返しのつかない事態が待っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、6月以降の数回利下げ予想は妥当=エストニア

ワールド

男が焼身自殺か、トランプ氏公判のNY裁判所前

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解

ワールド

イスラエルがイランに攻撃か、規模限定的 イランは報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中