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中朝関係

中国東北部の経済発展を阻む北朝鮮――中国の本音

2016年3月2日(水)18時59分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 労木氏は、おおむね以下のようなことを書いている。

1. 北朝鮮の行動は、アメリカが2020年までに兵力の60%をアジア太平洋に配備するという計画を助長し、その時期を早めている。北朝鮮の挙動は中国を威嚇することはあっても、アメリカには利益をもたらしているだけだ。

2. 北朝鮮が中国国境付近に核施設を設置しているのは、実は下心がある。北朝鮮の核施設の性能は低いので核漏洩(放射能汚染)の危険性が大きい。中国東北部には大きな脅威となる。それもあって中国は北朝鮮の非核化を必死になって叫んでいるのだが、北はどうしても言うことを聞かない。もし核開発を続けるというのなら、各施設を平壌付近に移動させてくれ。中国はもうこれ以上、すぐ隣に核の谷を作るような北の核政策を容認することはできない。

3. 中韓関係の離間工作に関して米朝は「同床異夢」ならぬ「異床同夢」を見ているのだ。目的は同じで、手段が違うだけ。アメリカは遥か遠くにいて自分は放射能汚染の危害に合わないので、平気で北朝鮮をけし掛けている。犠牲になるのは中国なのだ。

4. 民意調査を見てみろ。どれだけ多くの人民が北朝鮮を嫌っているか。北朝鮮よ、中国の安全を脅かすのはいい加減にしてくれ。もし朝鮮半島で戦争が起きても、二度と再び「抗美援朝」が再演されるとは思うな。

 おおむね、以上のような論評だ。環球時報が載せたということは、中国共産党がそう考えているという何よりの証拠だ。これが中国政府の本音だろう。

 事実、ネットでは96%のユーザーが北朝鮮を嫌っているというデータもある。

 このたび中国は安保理による北朝鮮制裁決議に賛同の意を表しているが、北朝鮮との間の中朝国境貿易が制限あるいは完全に遮断されたときに何が起き得るのかを、これらの評論は示唆しているように思われる。

[執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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