最新記事

北欧

デンマーク「難民にとって魅力のない国」を目指して

Denmark Places Anti-Refugee Ads in Lebanese Newspapers

止まるところを知らない難民の急増に「寛容な」北欧の一角がギブアップ

2015年9月8日(火)18時00分
スタブ・ジブ

難民を見捨てるな 反難民に転じた政府に抗議するデンマーク市民 Emil Hougaard/Scanpix Denmark-REUTERS

 デンマークの移民・統合・住宅省は今週、難民の流入阻止を狙った広告キャンペーンを開始した。「デンマークは難民に関する規制を全面的に強化する」という内容で、レバノンで発行されている4つの新聞にアラビア語と英語で掲載された。

 広告にはさらに、新たに入国する難民向けの支援金を最大で50%削減する法案を議会で可決したこと、永住権を獲得するために必要な言語力の引き上げや、永住権取得までの待機期間を最短でも5年とする、といった条件が列挙されている。仮にデンマークでの一時的な保護が認められたとしても、最初の1年間は家族を呼び寄せることができない。

 ヨーロッパには今、移民や難民が前代未聞の規模で流入している。ドイツやオーストリアは彼らを温かく歓迎し、支援の輪はフランスやイギリスにも広がっている。ローマ法王(教皇)フランシスコも、バチカン自らが2組の難民家族を受け入れると言い、ヨーロッパ全土のカトリック教区に対して同様の対応を求めた。

 これに対しデンマークでは、6月の総選挙で中道右派が勝利を収めて以来、ヨーロッパの人道主義からは距離を置き、難民問題に厳しい姿勢を取り始めた。2014年にデンマークは前年の倍の1万4,815人の難民を受け入れたが、今年は5月で既にその人数を上回った。いつ途絶えるともわからない難民数の急増に対し、対抗策を取ると決めたわけだ。

 7月にデンマークの新政権が難民への支援金を削減すると決めた直後から、インガ・ストイベア統合相は、難民に対する広告を出す意思を表明していた。雇用省の声明によると、「デンマークを難民にとって魅力のない国にすると同時に、仕事や社会活動を通じてデンマークに貢献できる人にとってはより魅力を増すだめ」の広告だという。

 広告は9月7日付けで、ペルシャ語やロシア語など10の言語に翻訳され、デンマーク移民局のウェブサイトにも掲載されている。

 こうした反移民政策に対し、一部の政治家は強い憤りを示している。コペンハーゲン市議会のミカエル・ガッテン議員は「不愉快きわまりない行為」と吐き捨て、社会自由主義政党「ラディケーリ」のセーニャ・スタンプはフェイスブックに以下の投稿をした。

「世界主義・人道主義のヨーロッパ人はきっとこう思うにちがいない。『一体、デンマークはどうしてしまったのか。かつては、開かれた心と寛容、平等を重んじ、迫害され貧しい世界の人々と連帯することで知られていた。それが突然、狭量で尊大な行動を取っている。投資や雇用、学問の地を選択するなら、ほかの国を考えた方がいいかもしれない』と」

 デンマークのような反難民政策が、他のヨーロッパ諸国に波及しないよう祈ろう。

ニュース速報

ビジネス

英中銀、「成長とインフレ」のトレードオフに依然直面

ビジネス

中国共産党大会、大幅な経済改革につながらない見通し

ビジネス

英利上げに賛成票を投じる準備できていない=ラムスデ

ビジネス

英利上げ、近いうちに賛成票を投じる準備できていない

MAGAZINE

特集:中国予測はなぜ間違うのか

2017-10・24号(10/17発売)

何度も崩壊を予想されながら、終わらない共産党支配──。中国の未来を正しく読み解くために知っておくべきこと

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    ポルノ王がトランプの首に11億円の懸賞金!

  • 2

    トランプ「ユネスコ脱退」、習近平「高笑い」

  • 3

    オーストリアで「世界最年少」首相誕生へ 31歳が唱えるニューポリティックス

  • 4

    年内にも発売されるセックスロボット、英研究者が禁…

  • 5

    早わかり衆院選 主な争点別の各党の選挙公約

  • 6

    石平「中国『崩壊』とは言ってない。予言したことも…

  • 7

    北朝鮮「国連加盟国、米の軍事行動に参加しない限り…

  • 8

    米軍は北朝鮮を攻撃できない

  • 9

    北朝鮮との裏取引を許さないアメリカの(意外な)制…

  • 10

    イタリア老舗ブランドの、本革じゃないバッグを選ぶ…

  • 1

    米軍は北朝鮮を攻撃できない

  • 2

    イージス艦事故の黒幕は北朝鮮か? 最強の軍艦の思わぬ弱点

  • 3

    トランプがアメリカを第3次世界大戦に導く危険を冒す

  • 4

    北朝鮮の送電網を破壊する、韓国「ブラックアウト爆…

  • 5

    ポルノ王がトランプの首に11億円の懸賞金!

  • 6

    自転車大国オランダ、信号機を消してみたら起きたこ…

  • 7

    通勤時間というムダをなくせば、ニッポンの生産性は…

  • 8

    北朝鮮との裏取引を許さないアメリカの(意外な)制…

  • 9

    カズオ・イシグロの「信頼できない語り手」とは

  • 10

    北朝鮮の金正恩が愛する実妹ヨジョン 党中枢部入り…

  • 1

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 2

    「北朝鮮はテロリストだ」 北で拘束された息子は異様な姿で帰国し死んだ

  • 3

    北朝鮮はなぜ日本を狙い始めたのか

  • 4

    「金正恩の戦略は失敗した」増大する北朝鮮国民の危…

  • 5

    トランプの挑発が、戦いたくない金正恩を先制攻撃に…

  • 6

    米軍は北朝鮮を攻撃できない

  • 7

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 8

    中国が北朝鮮を攻撃する可能性が再び----米中の「北…

  • 9

    米朝戦争が起きたら犠牲者は何人になるのか

  • 10

    カンボジアで飼育されている巨大変異ブタ、安全なの…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

全く新しい政治塾開講。あなたも、政治しちゃおう。
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 特別編集

最新版 アルツハイマー入門

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年10月
  • 2017年9月
  • 2017年8月
  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月