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サウジアラビア

アメリカ離れを加速させるサウジの不信と不満

盤石の友好関係というイメージとは裏腹に、中東政策をめぐる亀裂が広がっている

2015年2月18日(水)15時15分
ジョナサン・ブローダー(外交・安全保障担当)

サウジアラビアの故アブドラ前国王の墳墓に集まった人々 Reuters

 アメリカとサウジアラビアは永遠の相互依存関係にあり、その同盟は決して揺るがない。アメリカには石油が、サウジアラビアには安全保障が必要なのだから──そんな見方は、今や根拠を失いつつある。

 オバマ米大統領は先週、急きょサウジアラビアを訪問。先日死去したアブドラ国王の後を継いだサルマン新国王と、見解が相違する中東政策について幅広く話し合った。

 問題はイスラエルやシリアをめぐる対立だけではない。米政府が、サウジアラビアと敵対するイランと核協議で合意しようとしていることだけでもない。

 サウジアラビアは数年前から独自外交を展開している。「アメリカはもはや取引相手にすぎないらしい」と、チャールズ・フリーマン元駐サウジアラビア米大使は言う。「彼らが重視するのは、自分たちの利益だ」

 両国は70年前から、石油と安全保障の交換を軸に絆を深めてきた。湾岸戦争当時には、サウジアラビア国内に50万人規模の米軍が駐留。アメリカは原油価格が高騰しても、サウジアラビアの生産拡大を当てにできた。

 くさびを打ち込んだのが、9・11テロだ。実行犯の大半がサウジアラビア人だったため、アメリカには今も、サウジアラビア政府を疑う声がある。対するサウジアラビアは、03年のイラク戦争でアメリカに不信感を抱いた。開戦はイランの影響力拡大を招くと考えたからだ。

 オバマ政権になっても、失望は続いた。11年に「アラブの春」がエジプトに訪れた際、親米路線を続けるムバラク大統領をアメリカが見捨てたと、サウジアラビアは激怒した。後任となったムスリム同胞団出身のモルシ大統領を、アメリカが支持したことも問題だった(ムスリム同胞団はサウジアラビアで活動を禁じられている)。

 13年7月、事実上のクーデターでモルシ政権が倒れるとサウジアラビアはクウェートなどと共に、エジプトに120億ドルの経済援助を約束。一方、オバマ政権は人権問題を理由に、対エジプト援助を数カ月間停止した。

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