最新記事

核開発問題

イラン核協議、再延長でも見えない出口

イランの核開発の制限をめぐる合意が難航。結論先延ばしで高まる決裂の可能性

2014年12月4日(木)14時52分
ジョシュア・キーティング

危険はすぐそこに 交渉が期限切れになれば、どんな恐ろしいことが起こるかわからない Baris Simsek/Getty Images

 イランの核開発をめぐる主要6カ国(アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア、ドイツ)とイランの協議は、交渉期限を迎えた先月24日、来年6月末まで約7カ月の交渉再延長を決めた。各国の関係者はそれぞれ、自分の立場が正当化されたと胸をなで下ろしていることだろう。

 当初の期限までに答えが出なかったことは確かだが、イランとの合意を目指すことに賛成する人々に言わせれば、前進したことに変わりはない。延々と続く話し合いでも、戦争よりはましだ。交渉が継続されれば、もどかしいとはいえ、合意の可能性がわずかでも残る。

 イランと敵対関係にあるイスラエルのネタニヤフ首相は、「イランが推し進めようとしていた合意は最悪だった」と牽制し、「悪い合意よりは合意がないほうがいい」と交渉延長を支持している。

 一方で、アメリカとイランの保守派はそれぞれ、相手は真剣に歩み寄るつもりはないと受け止めるだろう。そして、合意に到達できなかったことについて、交渉の担当者を非難するだろう。実際にはどんな内容だろうと、合意に反対したはずだが。

 交渉の隔たりは依然として大きい。ウラン濃縮能力の制限につながる遠心分離機の数や、経済制裁解除の時期や手順、国際原子力機関(IAEA)の査察対象や期間などをめぐり、6カ国とイラン双方の主張は折り合わないままだ。

 それでもイスラエルを含めた関係者全員が、昨年11月に「共同行動計画」の合意にこぎ着ける前の状態よりは、むしろ交渉が続いている現状のほうがましだと認めている。12年にイスラエルがイランの核施設を空爆するという脅威が現実味を帯びたときの記憶も、まだそう遠くはない。

 イランの核開発計画は、私たちの知り得る限り、制限されたままだ。IAEAが発表した先月の報告書によると、イランは昨年の合意を履行している。
永遠には引き延ばせない

 それでも、最終合意に通じる扉が永遠に開いているわけではない。交渉が長引くほど、アメリカとイランでそれぞれ決裂の可能性が高まることになる。

 米上院では共和党議員が、交渉期限の再延長が決まる前から、24日に合意できなければ新たな制裁を科すべきだと主張していた。中間選挙で大勝した共和党が議会の主導権を握る年明けから、制裁強化を求める声がさらに高まるだろう。オバマ政権にとって、交渉の具体的な進展を示せないまま、議会の攻撃をかわすのは難しそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中