最新記事

中国経済

西アフリカのエボラ支援で中国がはじくソロバン

エボラ出血熱の悲劇が浮き彫りにする対外支援と貿易の切っても切れない関係

2014年10月15日(水)15時00分
キャスリーン・コルダーウッド

大感染 エボラ出血熱の猛威がアフリカの新興経済を脅かす John Moore/Getty Images

 西アフリカで感染拡大が続くエボラ出血熱は、既に2100人以上の命を奪っている(注:本誌発売時点)。この悲劇が皮肉にも、中国がアフリカで汚名を返上する機会になるかもしれない。NGOや各国政府からの支援の輪に、中国も加わることになったのだ。

 だが、支援を受ける側は複雑な感情を抱えている。エボラ熱の拡大がとりわけ深刻なリベリア、シエラレオネ、ギニアの3カ国に、中国は10年も前から巨額の援助や資本を投じてきたが、そこでは純粋な援助や投資以外の思惑が透けて見えたからだ。

「アフリカでは、中国企業は矛盾する存在だ」と、南アフリカ倫理研究所のリポートは指摘している。「親切な投資家でアフリカの友人だと歓迎される一方で、自分たちの利益ばかりでアフリカにほとんど見返りをもたらさない『新しい帝国主義者』とも思われている」

 中国国営メディアによれば今回中国は、感染拡大が深刻な地域に対し5月初旬に16万ドル相当、8月上旬に490万ドル相当の支援物資を送った。またリベリア、シエラレオネ、ギニアには中国籍の滞在者が2万人以上いることも伝えられた。

 数日後には、中国疾病管理予防センターからこれら3カ国に9人の専門家を派遣すると発表。現地の医療スタッフの訓練にも当たる。中国中央電視台によると、公衆衛生上の危機で中国が外国で人道援助に携わるのは初めてだという。

 動機はともあれ、今はとにかく支援が必要だ。「国際社会の結束が試されている」と、ヤン・エリアソン国連副事務総長は言う。

 中国は09年にアメリカを抜いて、アフリカの最大の貿易相手国に躍進した。11年のアフリカからの輸入は80%以上が、原油などの天然資源だ。

「今後もアフリカへの支援を、質的にも量的にも可能な限り増やしていく。中国の対外支援の半分以上がアフリカに向けられることになるだろう」と、中国の李克強(リー・コーチアン)首相は5月の世界経済フォーラム・アフリカ会議で語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米連邦高裁、ポートランドへの州兵派遣認める判断 ト

ワールド

高市政権きょう発足へ、初の女性宰相 維新と連立

ワールド

アルゼンチン中銀、米財務省と200億ドルの通貨スワ

ビジネス

米国株式市場=大幅続伸、ダウ500ドル超値上がり 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 7
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 10
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中